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酒説養生論 7巻 - 翻刻

酒説養生論 7巻 - ページ 23

ページ: 23

翻刻

【右丁】 の母(はゝ)といへり本草(ほんさう)に麹(きく)は朽(きう)なり欝(うつ)して衣(ころも)を 生(しやう)ぜしめ敗(やふれ)朽(くち)しむといへり然(しか)れは麹(かうし)先(まづ)腐敗物(くされもの) なり是に水穀(すいこく)を合(あはせ)て又 腐敗(くされ)して酒(さけ)となる醋(す)の 酸(すき)も水穀(すいこく)の腐敗(ふはい)に成(なり)酒(さけ)の甘(あま)く辛(からき)も水穀(すいこく)の腐(ふ) 敗(はい)に成(なる)凡(をよそ)腐敗(ふはい)の用(よう)を為(なす)事も亦(また)多(おほ)かるへし 荘子(さうじ)には臭腐化(しうふくは)して神奇(しんき)となるともいへり 水穀(すいこく)本(もと)人(ひと)を醉(ゑは)しむる事なし腐敗(ふはい)に因(より)て 湿熱(しつねつ)を為(なし)湿熱毒(しつねつとく)を生(しやう)ずるゆへに能(よく)人(ひと)を醉(ゑは)しむる なり醉(ゑひ)と云(いふ)は毒(とく)に中(あたり)て煩(わつらふ)なり他物(たふつ)に醉(ゑひ)たる 【左丁】 は病(やまひ)なる事を知(しれ)ども酒(さけ)に醉(ゑひ)たるは病(やまひ)なる事を 知(しら)ず楓樹(ふうしゆ)の菌(きのこ)竹蕈(たけなは)の毒(とく)に醉(ゑひ)たるは笑(わらひ)て止(やま)ず とて是を畏(をそる)酒毒(しゆとく)に醉(ゑひ)て笑(わらひ)て止(やま)ざるは是を恐(をそる) る事なし唯(たゝ)笑(わらふ)のみなりや或(あるひ)は怒(いかり)或(あるひ)は啼(なき) 精神(せいしん)昏乱(こんらん)言語(けんきよ)顛倒(てんだう)嘔吐(をうと)煩渇(はんかつ)頭痛(づつう)発熱(ほつねつ) 困睡(こんすい)醒(さめ)ず人事(しんじ)を省(かへりみ)ず食(しよく)する事を得(え)ず実(まこと) に宛然(ゑんぜん)たる大病人(たいひやうにん)なり他物(たふつ)に醉(ゑひ)てかゝる事 あらは憂(うれひ)恐(をそれ)ざる者(もの)有(ある)へきや酒毒(しゆとく)に醉(ゑひ)てかゝ るをは是を怪(あやしま)ざるものは皆(みな)人々(ひと〳〵)の然(しか)る事

現代語訳

【右丁】 の母と言われている。本草綱目では「麹(きく)は朽(きう)である。鬱蒸して衣(カビ)を生じさせ、敗朽させる」と言っている。そうであれば、麹はまず腐敗物である。これに水穀を合わせて、また腐敗させて酒となる。酢の酸味も水穀の腐敗によってできる。酒の甘さや辛さも水穀の腐敗によってできる。およそ腐敗の作用をなすことも、また多いであろう。荘子には「臭腐化して神奇となる」とも言っている。 水穀は本来人を酔わせることはない。腐敗によって湿熱を生じ、湿熱毒を生ずるゆえに、よく人を酔わせるのである。酔うというのは毒に中って煩うことである。他の物に酔ったの 【左丁】 は病気であることを知っているが、酒に酔ったのは病気であることを知らない。楓の木のきのこや竹茸の毒に酔って笑いが止まらないといって、これを畏れる。酒毒に酔って笑いが止まらないのは、これを恐れることがない。ただ笑うだけであろうか。あるいは怒り、あるいは泣き、精神昏乱し、言語顛倒し、嘔吐し、煩渇し、頭痛し、発熱し、困睡して醒めず、人事を省みず、食事することができない。実に明らかな大病人である。他の物に酔ってこのようなことがあれば、憂い恐れない者があるだろうか。酒毒に酔ってこのようになるのを怪しまない者は、皆人々がそうしていることだからである。

英語訳

【Right page】 is called the mother [of sake]. The Bencao Gangmu states that "koji (kiku) means decay (kiu). It ferments and produces a coating [mold], causing decay and rot." If so, then koji is first a corrupted substance. Water and grains are combined with this and further corrupted to become sake. The sourness of vinegar also comes from the decay of water and grains. The sweetness and pungency of sake also come from the decay of water and grains. The effects of decay are likely numerous. Zhuangzi also said, "The foul and rotten transform into the miraculous and strange." Water and grains originally do not intoxicate people. Because decay produces dampness and heat, generating damp-heat toxins, they can intoxicate people well. Being drunk means being poisoned and suffering from toxins. When one is intoxicated by other substances, 【Left page】 people know it is an illness, but when drunk on sake, they do not know it is an illness. When intoxicated by maple tree mushrooms or bamboo fungi toxins and cannot stop laughing, people fear this. When drunk on sake poison and cannot stop laughing, they do not fear this. Is it only laughter? Sometimes anger, sometimes crying, mental confusion, incoherent speech, vomiting, irritating thirst, headaches, fever, deep sleep without awakening, neglecting human affairs, unable to eat. This is truly a clear case of serious illness. If such things happened from intoxication by other substances, would there be anyone who would not worry or fear? That people do not find it strange when such things happen from sake poisoning is because everyone does the same thing.