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【右丁】
解(げ)するとて多(おほく)飲(のむ)事あり是等(これら)の人は身体(しんたい)の
動作(とうさ)に疎(うとき)ゆへに飲食(いんしい)ともに消化(せうくは)する事 遅(をそ)し故(かるかゆへ)
に酒毒(しゆとく)も亦(また)停滞(ていたい)して終(つゐ)に大患(たいくわん)を為(なす)又 身体(しんたい)筋(きん)
力(りよく)を労役(らうゑき)する者(もの)は酒(さけ)能(よく)労苦(らうく)を休(やむ)るとて多(おほく)飲(のむ)
事あり酒は只(たゝ)人身(じんしん)をして疲憊(つかれ)しむる物にして
何(なん)そ労力(らうりよく)を助(たすく)る事有へきや是 唯(たゝ)醉(ゑふ)時(とき)は痛(いたみ)痒(かゆみ)
をも知ざれは其 労苦(らうく)をも覚(おほへ)ざるのみにて是を
助(たすくる)にはあらさるをや荘子(さうし)に醉者(すいしや)の車(くるま)より墜(をつる)は
疾(とし)といへとも死(しな)ず神(しん)全(まつた)けれはなり乗(のる)も亦(また)知(しら)ず
【左丁】
墜(をつる)も亦(また)知(しら)す死生(しせい)驚懼(きやうく)其(その)胸中(けうちう)に入(いら)ずといへり
かく死(し)ぬる程(ほと)の事さへ知(しら)ざれは大方(おほかた)の労苦(らうく)は覚(おほへ)ざる
事さも有(ある)へし飲者(のむもの)は是を見(み)ても車(くるま)より墜(をち)て
死(しな)ざるは大(おほい)に酒(さけ)の徳(とく)なりと思(おもふ)へしされとも墜(をち)ざま
に因(より)ては必(かならす)死(しな)ずともいはれまじ墜(をち)たる上(うへ)に過(あやまち)て
車輪(しやりん)にても輾(きしら)れたらは神(しん)全(まつたし)とて砕(くだけ)すも有(あり)な
むや其 醉(ゑひ)て車(くるま)より墜(をち)て死(しな)ざるを徳(とく)とせんよりは
醉(ゑは)ずして墜(をち)ざるのまされるにはしかざるへし
○児童(じどう)飲(のむ)べからず三歳(さんさい)を小児(せうに)と云(いゝ)十歳(じつさい)を童子(どうし)
現代語訳
【右丁】
解消するといって多く飲むことがある。これらの人は身体の動作に疎いゆえに、飲食ともに消化することが遅い。故に酒毒もまた停滞して、ついに大きな病気を引き起こす。また身体・筋力を労役する者は、酒がよく労苦を休めるといって多く飲むことがある。酒はただ人身を疲労させるものであって、どうして労力を助けることがあろうか。これはただ酔った時は痛みやかゆみをも知らないので、その労苦をも覚えないだけであって、これを助けるのではないのである。荘子に「酔者が車より墜ちても、速いといえども死なない。神が完全だからである。乗るのも知らず、
【左丁】
墜ちるのも知らず、死生の驚きや恐れがその胸中に入らない」とある。このように死ぬほどのことさえ知らないのであれば、大方の労苦は覚えないこともあるだろう。飲酒する者はこれを見ても、車より墜ちて死なないのは大いに酒の徳だと思うであろう。しかし墜ち方によっては必ずしも死なずともいえないだろう。墜ちた上に過って車輪にでも轢かれたなら、神が完全だとて砕けないこともあろうか。その酔って車より墜ちて死なないことを徳とするよりは、酔わずして墜ちない方がまさっているに違いない。
○児童は飲むべからず。三歳を小児といい、十歳を童子
【右丁】
といって多く飲むことがある。これらの人は身体の動作が不慣れなため、飲食ともに消化が遅い。そのため酒毒も停滞してしまい、ついに重い病気を引き起こすのである。また、肉体労働に従事する者は、酒が労苦を癒すといって多く飲むことがある。しかし酒は人体を疲弊させるものであり、どうして労働力を助けることがあろうか。これはただ酔った時に痛みやかゆみを感じなくなるため、その労苦も感じなくなるだけであって、実際に助けているわけではない。荘子に「酔っ払いが車から落ちても、勢いよく落ちても死なない。精神が完全だからである。乗っているのも知らず、
【左丁】
落ちるのも知らず、死生への驚きや恐れが胸中に入ってこない」とある。このように死ぬほどのことさえ知らないのであれば、普通の労苦は感じないこともあるだろう。飲酒者はこれを見て、車から落ちて死ななかったのは酒の大きな効能だと思うであろう。しかし落ち方によっては必ずしも死なないとは言えまい。落ちた後に誤って車輪にでも轢かれたなら、精神が完全であっても砕けないことがあろうか。酔って車から落ちて死なないことを効能とするよりは、酔わずに落ちない方が優れているに違いない。
○児童は飲酒すべからず。三歳を小児といい、十歳を童子
英語訳
【Right page】
resolve it, and thus drink excessively. Since these people are unaccustomed to physical movement, both their eating and drinking are slow to digest. Therefore, alcohol toxins also stagnate, ultimately causing serious illness. Also, those who engage in physical labor often drink heavily, claiming that alcohol helps relieve their toil. However, alcohol merely exhausts the human body—how could it possibly assist one's labor? This is simply because when intoxicated, one feels neither pain nor itching, and thus becomes unaware of fatigue—it does not actually provide assistance. Zhuangzi wrote: "When a drunkard falls from a cart, though it moves swiftly, he does not die, because his spirit remains whole. He knows not that he rides,
【Left page】
nor knows that he falls; alarm and fear over life and death do not enter his heart." Since he does not even perceive such life-threatening situations, it is natural that he would not feel ordinary hardships. Drinkers, seeing this, would think that not dying from falling off a cart demonstrates alcohol's great virtue. However, depending on how one falls, one cannot necessarily say death will not occur. If, after falling, one were accidentally run over by the cart wheels, could even a whole spirit prevent being crushed? Rather than considering it virtuous to survive falling from a cart while drunk, it would be far better not to fall at all by remaining sober.
○Children should not drink. A three-year-old is called a small child, and a ten-year-old is called a boy