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翻刻
【右丁】
さも色へし然(しか)れとも凡(をよそ)婦人(ふしん)は天性(てんせい)懐孕(くはいよう)の事
有(あり)て懐孕(くはいよう)は血(ち)にあらざれは育(ゐく)する事なし故(かるかゆへ)に其
懐孕(くはいよう)を育(ゐく)すへき程(ほと)の血分(けつふん)の有余(ゐうよ)あるなり懐孕(くはいよう)
有(ある)に当(あたり)ては其 有余(ゐうよ)の血(ち)を以(もちて)是を育(やしなふ)なり懐(くはい)
孕(よう)あらざる時(とき)は其 余分(よふん)の血(ち)を下去(くだしさる)事 一月(いちげつ)に一度(いちど)
なり是を月経(ぐはつけい)とす故(かるかゆへ)に月経(くはつけい)にあらざれは血(ち)の有(ゐう)
余(よ)を見(みる)事なく血(ち)の有余(ゆうよ)にあらざれは胎育(たいゐく)する
事なし況(いはん)や婦人(ふしん)は本(もと)陰(いん)の体(たい)血(ち)も亦(また)陰(いん)の類(るい)な
れは専(もつはら)血(ち)を主(しゆ)とす故(かるかゆへ)に常(つね)に血(ち)を調(とゝのふ)るを第一(たいいち)と
【左丁】
せり然(しか)るに血(ち)を敗(やふり)血(ち)を乱(みたる)もの酒より甚(はなはた)しきはなし
飲(のみ)て身面(しんめん)の赤(あか)くなるは是 血(ち)の妄動(まうとう)する事 見(み)つへ
し其 妄動(まうとう)に因(より)ては又是を耗散(へらし)衰虚(をとろへ)しむるなり
其血の敗乱(はいらん)する者(もの)は月経(くはつけい)調(とゝのふ)事を得(え)ず月経(くはつけい)の調(とゝのは)
ざる者(もの)は胎育(たいゐく)を為(なす)事を得(え)ず或(あるひ)は懐胎(くはいたい)すといへとも
其 血(ち)の胎(たい)を育(やしなふ)に足(たら)ざれは必(かならす)小産(せうさん)を致(いたす)へし内経(たいきやう)
に醉(ゑひ)て房(はう)に入(いれ)は中気(ちうき)竭(つき)て肝(かん)を傷(やふり)月事(くはつじ)衰少(すいせう)にして
来(きたら)ずといへり凡(をよそ)多飲(たいん)の婦人(ふしん)は経水(けいすい)或(あるひ)は多(おほ)く或は
一月(いちけつ)に両度(りやうと)来(きたる)事あり或(あるひ)は帯下(たいげ)とて経行(けいかう)にあらず
現代語訳
【右丁】
そのように見えるであろう。しかしながら、およそ婦人は天性として妊娠することがあり、妊娠は血がなければ育つことはない。故にその妊娠を育てるのに十分な程度の血分の余裕があるのである。妊娠している時には、その余裕のある血をもってこれを養うのである。妊娠していない時には、その余分の血を下に去らせることが一月に一度ある。これを月経という。故に月経がなければ血の余裕を見ることがなく、血の余裕がなければ胎児を育てることはない。ましてや婦人は本来陰の体で、血もまた陰の類であるから、専ら血を主とする。故に常に血を調えることを第一とする。
【左丁】
のである。しかるに血を敗り血を乱すもので酒より甚だしいものはない。飲んで身体や顔が赤くなるのは、これ血の妄動することが見て取れる。その妄動によっては、またこれを消耗散逸させ、衰弱虚脱させるのである。その血の敗乱する者は月経が調うことができず、月経の調わない者は胎育を成すことができない。あるいは懐胎するといっても、その血が胎児を養うのに足りなければ必ず流産を招くであろう。『内経』に「酔って房事に入れば中気が尽きて肝を傷り、月事衰少にして来たらず」と言っている。およそ多飲の婦人は経水がある時は多く、ある時は一月に二度来ることがあり、あるいは帯下といって月経ではないのに
英語訳
【Right Page】
It may appear so. However, generally speaking, women by nature have the capacity for pregnancy, and pregnancy cannot develop without blood. Therefore, they have a surplus of blood sufficient to nurture that pregnancy. When pregnant, they use this surplus blood to nourish the fetus. When not pregnant, this excess blood is discharged downward once a month. This is called menstruation. Therefore, without menstruation there is no evidence of blood surplus, and without blood surplus there can be no fetal development. Moreover, since women are fundamentally of yin constitution and blood is also of the yin category, they are governed primarily by blood. Therefore, maintaining proper blood circulation is of utmost importance.
【Left Page】
However, nothing corrupts and disrupts blood more severely than alcohol. When one drinks and the body and face become red, this clearly shows the reckless movement of blood. Due to this reckless movement, it further causes depletion and dispersion, leading to weakness and exhaustion. Those whose blood becomes corrupted and disordered cannot regulate their menstruation, and those who cannot regulate their menstruation cannot achieve proper fetal development. Even if they do conceive, if their blood is insufficient to nourish the fetus, they will inevitably suffer miscarriage. The *Inner Canon* states: "If one enters the bedchamber while intoxicated, the central qi becomes exhausted, injuring the liver, and menstruation becomes scanty and ceases." Generally, women who drink heavily either have excessive menstrual flow, or menstruation comes twice in one month, or they suffer from vaginal discharge that is not menstruation.