翻刻
陸奥にても虫よけとて銀杏(イテウ)の葉はなんほもあるといへは言葉
一円わからす手にて仕方をしていらぬ■もらわぬ也彼も是も日本へ帰る
事なるものと思ふなら年数くらしける内には種々の珍物をもらひ
求する事も安けれと帰国はならぬものと思ひあきらめ候まゝ珍物を
持来らす長崎にてチヤカウの尾もらわぬ事を噺けれは夫れは
残念なり日本にては多くの金になるにと申され始て目の覚たる
心地也長崎に而も大きに笑られけり
一日本人の子を取る事を好よしに見得候得とも宗旨(シウシ)を替其国の
宗門に入不申候得は縁組相成不申事
一代官所より罷出候様被仰渡候間早速罷出候所今度都より早
飛脚を以申来候には日本人に御用之儀有之候間明日出立道中昼夜
無嫌帝王え罷出候様被仰渡候間明日出立の用意可致由被仰渡候処
代官所にて車を拵ひ其車の上に箱のよふなる物を置其箱に日本
の水主弐人置乗せ右壱つの車馬三疋或は四疋所に寄りて五疋にて
昼夜無嫌引せ宿継にて通る也案内の役人も同し車に乗り
同道す其車のはやき事飛か如し食物は麦の餅を多く車の内に心懸け
餅を喰水を呑休事なく通る也イリカウツカを出立二日過にて清太夫
清蔵此弐人の者は其車のおどる響(ヒヾキ)にて臓腑(ゾウフ)を痛(イタメ)遠路行く事の
不叶とて其品案内の役人え申し上けれは無是悲とて無拠も八ヶ年
居候イリカウツカへ帰る也此弐人の者とも今程は都(ミヤゴ)へ出候かいまた