翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

夜船閑話 - 翻刻

夜船閑話 - ページ 22

ページ: 22

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【右丁】 賢(けん)来り属(ぞく)し諸侯(しよこう)恐(おそ)れ服して民(たみ)肥(こ)へ国(くに)強(つよ)く 令に違(い)するの烝(ぢやう)民なく境(さか)ひを侵(をか)すの敵国(てきこく) なし国 刁斗(ちやうと)の声を聞く事なく民 戈戟(くはげき)の 名を知らず人身もまた然(しか)り【注①】至人は常に 心気をして下に充(み)たしむ心気(しんき)下に充つる 則は七凶内に動(うご)く事なく四 邪(じや)また外より 窺(うかゞ)ふ事 能(あた)はず営衛(ゑいゑ)充ち心神 健(すこや)かなり口ち 終に薬餌(やくじ)の甘酸(かんさん)を知らず身終に鍼灸(しんきう)の 【左丁】 痛痒(つうよう)を受(う)けず【注②】庸流(ようりう)は常に心気(しんき)おして上に 恣(ほしいまゝ)にす上に恣にする則(とき)は左寸の火右寸の金を 剋(こく)して五 官(くはん)縮(ちゝ)まり疲(つか)れ六親苦るしみ恨(うら)む 是故に漆園(しつゑん)曰く【注③】真人の息(いき)は是を息するに 踵(くびす)を以てし衆(しゆ)人の息は是を息するに喉(のんと)を 以てす【注④】許俊(きよしゆん)が云く蓋(けた)し気 下焦(かしやう)に在る則は 其息 遠(とふ)く気上焦に有る則は其息 促(しゝ)まる 上 陽子(やうし)が曰く人に真(しん)一の気有り丹田(たんてん)の中 【注①から注②の間の各文字の右傍に朱の「◦」有り】 【注③から注④の間の各文字の右傍に朱の「ヽ」有り】 【頭部欄外の朱書き】 豪傑戦地ニ居ル 平生ノ如キ之ナリ 以下真修ノ境ニ 入ル尋常ノ書ヲ 視ルト異ナリ楼ニ 登リ静坐シテ読 ムベシ

現代語訳

【右丁】 賢者が来たり属し、諸侯は恐れ服して、民は肥え国は強く、命令に違反する人民はなく、国境を侵す敵国もありません。国は刁斗(夜警の鐘)の声を聞くことなく、民は戈戟(武器)の名を知りません。人身もまた同様です。至人は常に心気を下に充実させます。心気が下に充実するなら、七凶(七つの邪気)は内に動くことなく、四邪(四つの邪気)もまた外から窺うことができません。営衛(気血の循環)が充実し心神が健やかで、口はついに薬餌の甘酸を知らず、身はついに鍼灸の 【左丁】 痛痒を受けません。凡庸な人々は常に心気を上に恣にします。上に恣にするなら、左寸の火が右寸の金を剋して、五官は縮み疲れ、六親は苦しみ恨みます。このゆえに漆園(荘子)が言いました。「真人の息は踵を以てし、衆人の息は喉を以てす」と。許俊が言うには、「そもそも気が下焦にあるなら、その息は遠く、気が上焦にあるなら、その息は促まる」と。上陽子が言うには、「人には真一の気があり、丹田の中 【頭部欄外の朱書き】 豪傑が戦地にいるも平生の如きこれなり。 以下真修の境に入る。尋常の書を視ると異なり。楼に登り静坐して読むべし。