翻刻!江戸の医療と養生

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救急摘方 2巻 - 翻刻

救急摘方 2巻 - ページ 68

ページ: 68

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【右丁】 証拠(シヨウコ)として治療(ヂレウ)を施(ホドコス)べき正鵠(メアテ)とするものにて、もし作用(オノヅカラナル) 力(ハタラキ)の須(モトム)るところに戻(モトリ)て薬を処(モチフ)れば、死を致(イタス)こともあるが故に、 妄意(メツタ)なることをせぬがよし、然(シカ)れども此(コヽ)に其 吐(ハカ)んと欲(オモヘ)ど 吐(ハク)ことならす、苦痛(クツウ)の甚(ハナハダシ)きものを救(スクヒ)得(エ)させんとて、その概(アラ) 略(マシ)を記(シルシ)たるなり、尋常(カロキトコロ)の食傷には、生熟湯(セイジユクタウ)とて、沸湯(ニヱユ)の 中へ水を各半(ハンブン)加(マゼ)て、塩(シホ)を少 許(バカリ)入て嚥(ノマ)せ、指(ユビ)にて咽(ノンド)をふかく 探(サグ)れば、吐を催(モヨフス)なり、これは嚥(ノマ)るゝ度(ホド)にせむとて水を加る にはあらず、必(カナラズ)沸(ニ)たちたる湯に新汲(クミタテノ)水を等分(トウブン)に合(アハ)せたる ところに、吐を誘(サソフ)効(コウ)あるなり、この食傷の苦悶(クツウ)甚(ハナハダシ)く、揮(テアシヲ)霍(フルハシ)【左ルビ:クワク】 撩乱(ミモダエスル)ものをさして霍乱(クワクラン)といへば、霍乱は食傷の病 証(シヨウ)【證】 【左丁】 にて、食傷の外に霍乱といふ病のあるにはあらず、食 傷、霍乱の軽(カロ)きものは、前 篇(ペン)に載(ノセ)たる健中散(ケンチウサン)にて可(ヨ)けれど、 もし霍乱して吐下甚く、亡陽(ツカレハテ)たるときには、脈(ミヤク)も微(カスカ)にな りて絶(タエ)んとするが如く、腹中(ハラノスヂ)拘急(ヒキツリ)、四支(テアシ)厥冷(ヒヱ)て、卒(ニハカ)に死ぬ る者あり、これ四逆湯(シギヤクタウ)といふ剤(クスリ)の正証(セイシヨウ)【證】なり、人参(ニンジン)を加た るを、四逆加入参湯といひ、茯苓(ブクリヤウ)と人参を加たるを、茯 苓四逆湯といふ、吐逆(ハキケ)なほ止(ヤミ)かぬるには、唐 呉(ゴ)茱萸(シユユ)を加て 用ふるなり、証(シヨウ)【證】によりて甘草(カンザウ)乾姜湯(カンキヤウタウ)をもちひてよき ことあり、急卒(ニハカ)にして薬(クスリ)を煎(セン)じる隙(マ)なきときは、速(スミヤカ)に 臍(ホソ)の両旁(リヤウワキ)の天 枢(スウ)といふところへ灸(キウ)すべし、これは両乳(チヽトチヽ)の

現代語訳

【右丁】 証拠として治療を施すべき目標とするものであって、もし自然な作用力の求めるところに反して薬を用いれば、死に至ることもあるので、むやみなことをしない方がよい。しかしながらここでは、その吐こうと思っても吐くことができず、苦痛の甚だしいものを救い得させようとして、その概略を記したのである。普通の食傷には、生熟湯として、沸騰した湯の中へ水を各半分ずつ加えて、塩を少し入れて飲ませ、指で咽喉を深く探れば、嘔吐を促すのである。これは飲みやすくするために水を加えるのではなく、必ず沸騰した湯に新しく汲んだ水を等分に合わせたところに、嘔吐を誘う効果があるのである。この食傷の苦悶が甚だしく、手足をばたつかせてもがき苦しむものを指して霍乱というのであれば、霍乱は食傷の病証である。 【左丁】 であって、食傷の外に霍乱という病があるのではない。食傷、霍乱の軽いものは、前編に載せた健中散でよいけれど、もし霍乱して嘔吐下痢が甚だしく、疲れ果てた時には、脈も微かになって絶えそうになるようで、腹中が引きつり、四肢が冷えて、急に死ぬ者がある。これは四逆湯という薬の正証である。人参を加えたものを四逆加人参湯といい、茯苓と人参を加えたものを茯苓四逆湯という。嘔吐がまだ止まらない場合には、呉茱萸を加えて用いるのである。証によって甘草乾姜湯を用いてよいことがある。急で薬を煎じる暇がない時は、速やかに臍の両脇の天枢というところへ灸をすべきである。これは両乳の

英語訳

【Right page】 evidence to be used as a target for treatment, and if medicine is used contrary to what the natural functional power requires, it may lead to death, so it is better not to do anything reckless. However, here I have recorded the general outline to help save those who want to vomit but cannot vomit and are suffering severe pain. For ordinary food injury, use "Seijuku-tō" (raw-cooked decoction) - add water in equal halves to boiling water, add a little salt and have them drink it, then probe deep into the throat with a finger to induce vomiting. This is not adding water to make it easier to drink, but rather the effect of inducing vomiting lies specifically in combining equal parts of boiling water with freshly drawn water. When the distress from food injury is severe and the person flails their limbs in agony, this is called "kakuran" (cholera), so kakuran is a disease pattern of food injury. 【Left page】 There is no separate disease called kakuran apart from food injury. For mild cases of food injury and kakuran, the Kenchū-san mentioned in the previous volume will suffice, but if kakuran involves severe vomiting and diarrhea and the patient is completely exhausted, the pulse becomes faint as if about to stop, the abdomen cramps, the four limbs become cold, and some die suddenly. This is the true indication for the medicine called Shigyaku-tō (Counterflow Decoction). When ginseng is added, it's called Shigyaku-ka-ninjin-tō, and when poria and ginseng are added, it's called Bukuryō-shigyaku-tō. When nausea still won't stop, evodia is added for use. Depending on the pattern, Kanshō-kankyō-tō may be appropriately used. When it's urgent and there's no time to decoct medicine, quickly apply moxibustion to the points called Tenshū on both sides of the navel. These are at both nipples'