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【右丁】
なり、かくすれども熱(ネツ)消(サメ)ず、焼(ヤク)が如くになるものは、既(スデ)に膿(ウミ)
を醸(カモサ)んとするものなれば、冷罨法(レイカウハフ)【左ルビ:サマスムシグスリ】はよろしからず、巻末
に載(ノセ)たる温罨法(ウンカウハフ)【左ルビ:アタヽムルムシグスリ】を頻(シキリ)に行て、その膿(ウミ)を催促(ウナガス)べし、身(ミノ)熱(ネツ)
劇(ハゲシ)く、食気少く、膿血多出て日を経(フ)るときには、血液(チシル)虚乏(フソク)し
て、遂(ツヒ)に救(スクヒ)がたきにいたるがゆゑに、かゝる証(シヨウ)【證】には、さま〴〵与(アタフ)る
剤(クスリ)はあれど、俗家の用るには、官製人参(オタネニンジン)【注】を初として、播(バン)
州(シウ)、奥州(オウシウ)、信州(シンシウ)又は朝鮮(テウセン)の広山(クワウサン)参、または清舶(モチワタリ)の広東(クワントウ)人参の
類(ルヰ)、いづれの産(サン)にても、一 貼(テウ)三匁ばかり、生薑(シヤウガ)を加へ、濃(コク)煎(セン)じ
て、日に二三 貼(テウ)を服(ノマ)しむべし、預(アラカジメ)之を蓄(タクハヘ)んと欲(オモフ)ときには、
錬膏(レンコウ)となして用ること尤よし、往古(ムカシ)高価(アタヒタツトキ)朝鮮(テウセン)人参のみ
【注 御種人参=八代将軍徳川吉宗(一説に三代将軍家光)が種子を朝鮮より取り寄せ試植させたところからいう薑朝鮮人参の異名。】
【左丁】
なりし頃(コロ)より、人参は必 些(チト)許(ハカリ)用ふべきものと思しは、もと
其 真(マコトノ)効(コウ)を知ぬより起(オコル)ことにて、此薬は性(セイ)至て緩慢(ユルヤカ)なる物
なれば、かゝる証(シヨウ)【證】には、必多く用ひねば、真(マコトノ)効(コウ)は見(アラハ)れがたし、
飯(メシ)は米粥(カユ)を用ひ、滋養(オギナヒ)には、棘鬣魚(タイ)、鯉魚(コヒ)、火魚(カナガシラ)、鰈魦(カレイ)、比目魚(ヒラメ)、
鱵魚(サヨリ)、雞魚(キス)、石首魚(イシモチ)、石鮅魚(ムツ)、鱸魚(スヾキ)、鰻鱺(ウナギ)、鮧魚(ナマズ)、鰌魚(ドヂヤウ)、鯽魚(フナ)、鶏蛋(ニハトリノタマゴ)
の類を撰(ヱラミ)て、食過(クヒスゴサ)ぬやうに喫(クハ)しむべし、この防腐水(バウフスイ)【左ルビ:クサレヲイムルミヅ】には、末
に又方と出せるを用べし、もし骨(ホネ)の裂(サケ)て離断(ハナレ)ぬものは、強(シヒ)
て取ことなく、本位(モトノトコロ)に復(カヘシ)おけば、大かたは自然(シゼン)の機関(ハタラキ)に
て、接続(ツゲル)ものなり、されど鉄丸(タマ)の骨を壊(ヤブリ)たるより、腐骨(フコツ)
疽(ソ)となるもあれば、左右(トカク)に最初(サイシヨ)の治法を邋遢(ナホザリ)にせぬ
現代語訳
【右丁】
である。このようにしても熱が冷めず、焼けるようになるものは、既に膿を作ろうとするものであるから、冷湿布法は良くない。巻末に載せた温湿布法を頻繁に行って、その膿の形成を促進すべきである。身体の熱が激しく、食欲が少なく、膿血が多く出て日数が経つときには、血液が不足して、ついに救いがたい状態に至るため、このような症状には、様々な与える薬はあるが、一般家庭で用いるには、官製人参を始めとして、播州、奥州、信州または朝鮮の広山参、または中国からの広東人参の類、いずれの産地でも、一回三匁ほど、生姜を加え、濃く煎じて、日に二三回を服用させるべきである。あらかじめこれを蓄えようと思うときには、練り膏薬にして用いることが最もよい。昔、高価であった朝鮮人参のみ
【左丁】
であった頃より、人参は必ず少量だけ用いるべきものと思われているのは、元来その真の効果を知らないことから起こることで、この薬は性質が非常に穏やかなものであるから、このような症状には、必ず多く用いなければ、真の効果は現れにくい。食事は米粥を用い、滋養には、鯛、鯉、カナガシラ、カレイ、ヒラメ、サヨリ、キス、イシモチ、ムツ、スズキ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、フナ、鶏卵の類を選んで、食べ過ぎないように食べさせるべきである。この防腐水には、末尾にまた別の方として出したものを用いるべきである。もし骨が裂けて離断していないものは、無理に取ることなく、元の位置に戻しておけば、大抵は自然の機能によって、接続するものである。しかし鉄の弾丸が骨を壊したことから、腐骨疽となることもあるので、何はともあれ最初の治療法をおろそかにしてはならない。
英語訳
【Right Page】
This is the case. If the heat does not subside even after doing this and it becomes like burning, it is already preparing to form pus, so cold compress therapy is not good. The warm compress therapy listed at the end of the volume should be frequently applied to promote the formation of that pus. When body heat is severe, appetite is poor, and pus and blood discharge heavily over many days, blood becomes deficient and eventually reaches an incurable state. For such symptoms, there are various medicines to give, but for use in ordinary households, starting with government-cultivated ginseng, including ginseng from Banshū, Ōshū, Shinshū, or Korean Gwangsan ginseng, or Guangdong ginseng imported from China - regardless of origin, about 3 monme per dose with added ginger, decocted thick, should be taken 2-3 times daily. When wanting to store it in advance, making it into a concentrated paste for use is best. In ancient times when only expensive Korean ginseng was available,
【Left Page】
From that period, the belief that ginseng should only be used in small amounts arose from not knowing its true effectiveness. Since this medicine has a very mild nature, for such symptoms, it must be used in large quantities or its true effect will hardly appear. For meals, use rice porridge, and for nourishment, select from sea bream, carp, red gurnard, flounder, sole, halfbeak, whiting, croaker, gnomefish, sea bass, eel, catfish, loach, crucian carp, and chicken eggs, ensuring not to overeat. For this antiseptic water, use what is listed as "another formula" at the end. If bones are cracked but not separated, do not forcibly remove them - if returned to their original position, they will mostly reconnect through natural mechanisms. However, since iron bullets breaking bones can sometimes lead to bone necrosis, the initial treatment method must not be neglected under any circumstances.