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【右丁】
第九回
当時(そのとき)日天子(につてんし)御声(おんこゑ)高(たか)やかに。鳴呼(あゝ)不便(ふびん)やな汝等(なんじら)。やゝも
すれば他(ひと)をにくみ自(おのれ)を愛(あい)し。彼(かれ)を倒(たふ)しおのれ立(たゝ)んと欲(ほつ)し。
他(ひと)の業(なりはひ)を妨(さまた)げておのれ一人(ひとり)に利(り)あらん事(こと)を思(おも)ひ。得手(えて)
勝手(かつて)のみを計(はかり)て天地同体(てんちどうたい)の仁(じん)。平等利益(びやうどうりやく)の慈悲(じひ)を
しらず。自(おのれ)他(ひと)を害(そこな)へば他(ひと)また自(おのれ)を害(そこな)ふ。蟷螂(たうらう)の斧(をの)を潜(ひそ)
めて蝉(せみ)を窺(うかゞ)ふ。却(かへつ)て黄雀(くはうじやく)の其後(そのうしろ)にあるを不知(しらざる)の愚(ぐ)
をいかにせん。抑(そも〳〵)朕(まろ)は高御産巣日神(たかみむすひのかみ)のみことのりを受(うけ)
【左丁】
大千世界(だいせんせかい)を照臨(てら)し万物(ばんもつ)を憐(あはれ)み。一刻片時(いつこくへんし)も休息(きうそく)せず。
汝(なんじ)を恵(めぐ)むに別(わき)て愛(あい)するものもなく。別(わき)て悪(あく)むものもなく
天地万物(てんちばんもつ)を養(やしな)ひ。さらに依怙(えこ)なく贔屓(ひゝき)なし。殊(こと)に
親(おや)の子(こ)を思(おも)ふがごとく幾人(いくたり)持(もち)ても皆以(みなもつて)可愛(かあい)し。それ
汝等((なんじら)の体(たい)は各(おの〳〵)異(こと)なれども。悉皆(こと〴〵くみな)吾子(わがこ)□□□。吾子(わがこ)なる時(とき)は
此親(このおや)を見(み)ならひて。我勝手(わがかつて)ばかり計(はか)らず。道(みち)を守(まも)つて
正直(しやうぢき)に世(よ)をわたれ。然(しか)る時(とき)は四海(しかい)の内(うち)みな兄弟分(きやうだいぶん)にして。
我(われ)人(ひと)と争(あらそ)はずは人(ひと)また我(われ)と争(あらそ)はじ。汝等(なんじら)飯(めし)餅(もち)酒(さけ)と立別(たちわか)れ