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コレクション: 漂流記コレクション

漂流紀事 - 翻刻

漂流紀事 - ページ 30

ページ: 30

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【右丁】 貯ヘ吝用シテ飢ヲ禦ク◯炙烘ノ具ヲ設ニ心頗労ス 又竈ヲ造リシ時ニ此無人ノ絶域ニ身ヲ終ント思ヘ ハ涙数行ヲ流シ独リ歎シテヤマズ◯一日銃ヲ提#1ケ テ浜上ヲ吟行スル余リ海ヲ望ミ独歎シテ云今此身 ヲ海中ニ投シテ永ク休セン乎終ニ舎ニ帰ヘリ思ヘ ラク此火薬鉛子モ尽キ衣服モ蔽レナハ更ニ生活ノ 方ニ苦マン又病ニ罹ラハ一人ノ扶助スルモノナシ ト歎息スルコト多時◯第九月第三十日ニ於テ大陽頂 上ニアリ是ヲ以推シ此島赤道ノ北九度二十二分左 右ノ地ナルヲ知ル◯紙筆ナキ故月日ヲ記サヽレハ 終ニ月日ヲ失フヲ恐レ初メ我漂着セル岸畔ニ一ノ 【左丁】 大柱ヲ樹ツ小刀ニテ楷字ヲ大書ス其訳曰魯敏孫嶇 瑠須紀元千六百五十九年漂至此島ト又其側ニ横画 シテ日数ヲ記シ朔望弦ハ其画ヲ大ニシ年月時日ヲ 探ルノ暦柱トス其後又破舶ヨリ運ヒシ所ノ筥ヲ能 撿シ見レハ鵝筆墨汁白紙及造作ノ器細工ノ具四箇 ノ羅盤又測量ノ器日晷表遠鏡海図輿地図航海ノ書 等アリコレ皆用不用ヲ弁セス急卒ニ積ミシ故其器 ノ有無ヲ知ラス又彼地ヲ出ルトキニ積来ルモノ也 又「ポルトガル」及「ローマ」《割書:地|名》ノ書等アリ◯嘗破舶ヨリ 二頭ノ猫ト一頭ノ犬ヲ引ケリ猫ハ懐ニシテ上陸シ犬 ハ桴ニ従ヒテ水ヲ游キ来ル◯筥中ニ得ル所ノ筆墨

現代語訳

【右丁】 蓄えて、けちけちと使って飢えを防ぐ。◯炙り焼きの道具を設置するのに心がとても疲れる。また竈を造った時に、この無人の絶海の孤島で人生を終えるのだと思うと、涙を数行流して独り嘆いてやまない。◯ある日、銃を提げて浜辺を散歩していた時、海を眺めて独り嘆いて言った「今この身を海中に投じて永遠に休もうか」。結局家に帰って考えるには「この火薬や鉛弾も尽き、衣服も破れてしまったら、さらに生活の方法に苦しむだろう。また病気にかかったら一人として助けてくれる者もいない」と嘆息することが長時間続いた。◯第九月第三十日において太陽が頭上にあった。これによって推測すると、この島は赤道の北九度二十二分前後の位置にあることを知る。◯紙と筆がないので月日を記さなければ、ついに月日を見失うことを恐れ、初めに私が漂着した岸辺に一本の 【左丁】 大きな柱を立てた。小刀で楷書を大きく書いた。その内容は「魯敏孫(ロビンソン)クルーソー紀元千六百五十九年此の島に漂着す」と。またその側に横線を引いて日数を記し、朔望や上下弦の月の時はその線を大きくして、年月時日を調べる暦柱とした。その後また破船から運んできた箱をよく検査してみると、ガチョウの羽ペン、墨汁、白紙及び製作の器具、細工の道具、四個の羅針盤、また測量の器具、日時計、望遠鏡、海図、世界地図、航海の書等があった。これらは皆必要不要を判別せずに急いで積んだので、その器具の有無を知らなかった。またあの地を出る時に積んできたものである。また「ポルトガル」及び「ローマ」の書等もあった。◯かつて破船から二匹の猫と一匹の犬を連れてきた。猫は懐に入れて上陸し、犬は筏に従って水を泳いでやって来た。◯箱の中で手に入れた筆と墨で