翻刻
もろこしじん
やうの江のかし
に大きなるしほ
やあり名を
ゑんじやう
といふひとり
の子をも
てりゑん
しうさい
と名
づく
日本で
しほうり
といつちやァ
けちなじゝ
いのしやう
ばいなれ
どからは
海がと
をいからさかなと
しほはふじゆうなりゆへに《振り仮名:塩商|ゑんしやう|しほや》と
きては大のぶげんなりとさるがく
しやのぢきばなしなりよもやゑん
しやうくさひてつほうではあるまい
【ゑんしうさい】
ドリヤ
五月の
しやうぶ
けんで
きつて
やらう
おあいての
でつち
ゑんどう
ばんとう
ゑん文たい
【ゑんどう、もしくはゑん文たいの台詞】
パア〳〵
つよいぞ〳〵
日本のきん
ぴら
此方の
くはんう【関羽】
てうひ【張飛】
〳〵
現代語訳
もろこし(中国)人のような江戸の菓子屋に大きな塩屋があり、名を塩商(えんしょう)という。一人の子を持っており、塩秀斎(えんしゅうさい)と名付けた。
日本で塩売りと言ったらけちな商売だが、中国では海が遠いので魚と塩は不自由であるため、塩商は大変な富豪である。これは猿楽師の直話であり、まさか塩商が臭い鉄砲(屁)をするまいよ。
【塩秀斎】
さあ、五月の菖蒲剣で切ってやろう。
相手の丁稚:塩豆(えんどう)
番頭:塩文太(えんぶんたい)
【塩豆、もしくは塩文太の台詞】
ばあばあ、強いぞ強いぞ。日本の金平(きんぴら)よ、こちらの関羽、張飛だ。
英語訳
In Edo, at a confectionery shop run by a Chinese-like person, there is a large salt merchant named Ensho (Salt Merchant). He has one child whom he named Enshusai.
In Japan, salt selling is considered a petty business, but in China, since the sea is far away, fish and salt are scarce, so salt merchants are very wealthy. This is a direct story from a sarugaku performer - surely a salt merchant wouldn't make stinky gunpowder (fart)!
【Enshusai】
Now, I'll cut you down with this May iris sword!
His opponent's apprentice: Endo (Salt Bean)
Head clerk: Enbuntai (Salt Bunta)
【Endo or Enbuntai's dialogue】
Bah bah, strong, so strong! Japanese Kinpira, here are our Guan Yu and Zhang Fei!