翻刻
正則よしともおほしめさしこのヽち御門下に伺公候
はんに詮なしとて引こもる《割書:此時福嶋陣かへの|事あり ともいふ》徳川殿この
よしを聞召て正則か申条其理なきに非す伊奈
かはからひ不当也といからせ給ひしかは伊奈はら腹きつて
死す井伊兵部少輔直政やかて其首をもたせて
正則か陣にゆきむかふ正則これを見て井伊殿の御
力によつて正則恥すゝひて候とて悦ける此年十一月
《場所:安芸備後》両国を正則に給ふ今度戦功を少賞せ
らるゝ所也《割書:四十九万八千石○此時ある人井伊侍従に むかひて|正則おのか功にほこつて伊奈に腹きらせし》
《割書:人なるに御恩他に異なるこそ心得ねといひしかは天下のために|大忠をいたせる 人なり 伊奈又御家人たる上はかくあるへき事》
《割書:勿論也さりなから人ことに一生かうちあやまちなからん事叶ひ|かたしされはかく 御恩のふかきこそ正則のつゝしみあつかるへき》
《割書:事なれと|いひしと也》明れは六年 三河守殿 《場所:越前国》給らせ給ひ
入部なされしに正則みつから《場所:北庄》ゆきむかひ賀
し申さる守殿宗徒の御家人にむ正則此後も
つねに門下に伺候せんに家なふてもかなふへからす
家つくるへき地給らはやと望みて 其後又正則年来
のよしみ忘れ参らせす守殿天下の御大事あらんに
正則かならすみかた仕るへしさりなから太閤の仰を
かる候旨侍れは 正則か身秀頼の世にましまさん
かきりは心にもまかすへからすと 語て□給つてこそ