翻刻
【右丁】
が咽(のど)につかへらんらめらしもらつし
こくたいされとも人間(にんげん)活物(かつぶつ)にて
心(こゝろ)を使(つか)ふか手足(てあし)をつかふか
じつとしては居(い)られぬならひ
醤(ひしほ)で茶漬(ちやづけ)をしてやりながら
思(おも)ひ付(つい)たる物類(ぶつるい)名義(めいぎ)年(とし)久(ひさ)しく
【左丁】
住(す)む馬食町(ばくらうてう)の食(く)ふといふから始(はじま)
りて先(まづ)食物(しよくもつ)の故事付(こじつけ)案事(あんじ)仮(か)
名(な)違(ちが)ひやら何て字(じ)やら訛(なまり)片言(かたこと)
あたりまへめつたやたらに書(かき)つ
づれは其数(そのかず)凡(すべ)て何十条(なんぢうでう)是(これ)より
次第(しだい)に嘘(うそ)が上(あが)り天門(てんもん)地理(ちり)と
現代語訳
【右丁】
が喉につかえて、らんらめらしく、もらっとして
苦体させられても、人間は活物(生きもの)であって、
心を使うか手足を使うか、
じっとしてはいられない習い(性分)である。
醤油で茶漬けをしてやりながら、
思いついた物類名義(物の名前の意味)を、年久しく
【左丁】
住む馬喰町の「喰う」ということから始まって、
まず食物の故事付け(こじつけ)、案じ(考え)、仮名
違いやら何という字やら、訛り片言、
あたりまえ、めったやたらに書きつづれば、
その数すべて何十条、これより
次第に嘘が上がって(高尚になって)天文地理と
英語訳
【Right Page】
gets stuck in my throat, all muddled and confused,
and though I suffer for it, humans are living beings,
and whether using one's mind or using one's hands and feet,
one cannot remain still by nature.
While eating tea over rice with soy sauce,
the meanings of various things that came to mind, for many years
【Left Page】
starting from "eating" (kuu) in Bakurō-chō where I live,
first forced etymologies of foods, pondering, incorrect kana,
what characters they might be, dialect and broken speech—
writing down ordinary things, helter-skelter,
the total number being several dozen items. From this point
the lies gradually become more elevated, reaching astronomy and geography