翻刻
【右側】
旧里陸奧の千賀のうらヘの浜伝ひ
秋かせさそふさむさわの湊にて
同し友《振り仮名:おなし|とし》打乗て纜(ともつな)を取(とり)
んとするに天気すくれす晴
やらぬ長雨降(しけそく)のけしき故一日二日と
見合す内早一月計の日も立て
次の月廿七日午の刻順風にまかせ
北かせに走登其夜も同し風に帆を張り
【左側】
廿九日は昼夜共に南に吹かわり卅日の
五時より又そろ〳〵と北風ふき出し
申刻には大雨風車軸をなしはけしき汐
浪に閖(ゆり)上ゆり下四方真黒闇のことく
悪風益強く吹舟の艫(とも)を打わり
梶を折橋小舟まても打流し
十六人の水主汗水になり命限り
根かきりに働とも只吹廻しきひ敷故