翻刻
三かはのくにさいが
だけのはちす
ばらいさくといふ
ぬす人のてうぼん
ありいろ〳〵に
みをやつして
はいくはいし
けるこのふたりの
こどもよふす
をとつくりと
見てひやく
せうどもの
かへりたるあ
とにて
こどものすみ
かをたづねけるに
ふたりとも
ふうらいものにて
やどなしなりと
いふらいさくかゝへ
おかばすへ〴〵
用にもたつべき
ものとおもひ
ければふたりの
こどもにわが
かたにほう
こうせよと申
ければさるの介
おめへくらいの
さむらひにほう
こうはいやだといふ
しからば今につ
ぽんになをしられたる
さいがだけのらいさくと
いふものにほうこう
せよと申ければ友市
きゝてそのらいさくと
いふはたしかぬす人の
おかしらしのびのめい
じんだといふことそれ
ならばほうこうしま
せうといふらいさく
よろこびすなはち
そのはちすばらい
さくといふはわがこと
なりとてそれより
ふたりのこどもに
したくさせ
さいがだけへと
うちつれて
かへりける
はちすば
らい作
〽せいてうの
のちぬす人
のていうぼん石川
五ゑもんと
いゝしはこの友
市がことにて
はしばひさよし
となのりのちに
四かいのあるじと
なりしはこのさる
のすけがこと
なりけり
友市
猿之
介
現代語訳
三河の国西ヶ嶽の蓮葉来作という盗人の頭目がいた。いろいろに身をやつして徘徊していた。この二人の子供の様子をとつくりと見て、百姓どもが帰った後で、子供の住み処を尋ねたところ、二人とも風来者で宿なしであるという。来作は抱え置けば、いずれ用にも立つべき者と思ったので、二人の子供に「我が方に奉公せよ」と申した。
すると猿之介は「お前ぐらいの侍に奉公は嫌だ」と言う。「それならば、今に日本中に名を知られた西ヶ嶽の来作という者に奉公せよ」と申したところ、友市が聞いて「その来作というのは確か盗人の頭領、忍びの名人だということだ。それならば奉公しましょう」と言う。来作は喜び、すなわちその蓮葉来作というのは我がことであると告白し、それより二人の子供に支度をさせ、西ヶ嶽へと連れて帰った。
蓮葉来作
♪政朝の後に盗人の頭目石川五右衛門と言ったのは、この友市のことで、羽柴久吉と名乗り、後に四海の主となったのは、この猿之介のことであった。
友市
猿之介
英語訳
There was a bandit chief named Hachisubara Raisaku of Mount Saiga in Mikawa Province. He wandered about in various disguises. After observing these two children carefully and seeing that the farmers had returned home, he inquired about the children's dwelling place. Both were drifters without lodging. Raisaku thought that if he took them in, they would eventually prove useful, so he told the two children, "Come and serve under me."
Sarunosuke replied, "I don't want to serve a samurai of your level." "Then serve under one called Raisaku of Mount Saiga, who is now renowned throughout Japan," he said. When Tomoichi heard this, he said, "That Raisaku is certainly a bandit chief, a master of stealth. In that case, I will serve you." Raisaku was pleased and immediately revealed that he himself was that Hachisubara Raisaku. From then on, he had the two children prepare themselves and took them back to Mount Saiga.
Hachisubara Raisaku
♪The bandit chief who came after Seicho and was called Ishikawa Goemon was this Tomoichi, and the one who called himself Hashiba Hisayoshi and later became master of the four seas was this Sarunosuke.
Tomoichi
Sarunosuke