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コレクション: 十返舎一九

【黄表紙】木下蔭狭間合戦 - 翻刻

【黄表紙】木下蔭狭間合戦 - ページ 19

ページ: 19

翻刻

そのゝち友市はせいてう するにしたがひあくまで こゝろふてきにしてあくとう をこのみそのうへらいさくが かたよりにんじゆつのいち くはんをうはいとりし ゆへしのびのじゆついち〳〵 しやうたつし かはちのくに いしかはこほり よりいでたる ものゆへ□□□に いし川五ゑもん となのりて いまはとうぞくの てうほんとなり てしたあまたした かへらくやうみぶむら にすみけるがふとおも ひつきあしかゝのてうほう めりやう丸のつるきみよし てうけいかたにあるよし せんねんらいさくがものがたり したることをおもいいだし ひそかにみよしてうけいが やかたへしのびこの つるぎをうはひ とりたちのく 強盗の  張本 石川  五右衛門 【ここより後編の中巻、たぶん】 こゝにみぶ むらに次郎右衛門といふ ものありもとはかはちのくに 石川こほりよりこゝへひき こしきたりける一子友市 おさなきときいせさんぐう してすぐにゆくへしれ ざりしがせいてうしておや ざとへかへりける次郎右衛門 よろこびいるところに 友市今は五右衛門とな のりてことのほかのあく とう也次郎右衛門はぎり あるせがれなり 小ふゆがとも【小冬は娘の名前】 うきめにあをふ かとそれのみ なげきくらしける

現代語訳

その後友市は成長するにしたがい、あくまで心不敵にして悪党を好み、その上来作がかつて忍術の一巻を奪い取ったゆえ、忍びの術に一つ一つ上達し、河内国石川郡より出た者ゆえ、石川五右衛門と名乗って、今は盗賊の頭目となり、手下多数を従えて洛外美豆村に住んでいた。 ふと思いついて、足利の重宝である名刀丸のつるぎが三好長慶の方にあるという、先年来作が物語したことを思い出し、密かに三好長慶の屋敷に忍び込み、この剣を奪い取って立ち去った。 強盗の張本 石川五右衛門 【ここより後編の中巻、たぶん】 ここに美豆村に次郎右衛門という者がいた。もとは河内国石川郡よりここへ引っ越してきた。一子友市が幼い時に伊勢参宮してそのまま行方知れずになったが、成長して親の元へ帰ってきた。次郎右衛門が喜んでいるところに、友市は今は五右衛門と名乗って、この上ない悪党である。次郎右衛門は義理ある息子なのに、小冬(娘の名前)が辛い目に遭うのではないかとそればかり嘆き暮らしていた。

英語訳

Thereafter, as Tomoichi grew up, he became thoroughly rebellious at heart, favoring evil companions. Moreover, since Raisaku had previously stolen a scroll of ninjutsu techniques, Tomoichi mastered the ninja arts one by one. Being originally from Ishikawa District in Kawachi Province, he took the name Ishikawa Goemon and became the leader of a band of thieves, with many followers under his command, living in Mizu Village outside the capital. He suddenly recalled what Raisaku had told him years before about the famous sword Maru no Tsurugi, a treasure of the Ashikaga, being in the possession of Miyoshi Chōkei. He secretly infiltrated Miyoshi Chōkei's mansion, stole this sword, and departed. Leader of Bandits: Ishikawa Goemon [From here begins the middle volume of the second part, probably] Here in Mizu Village lived a man called Jirōemon. Originally from Ishikawa District in Kawachi Province, he had moved here. His only son Tomoichi had gone on a pilgrimage to Ise Shrine when young and disappeared without a trace, but upon reaching adulthood returned to his parents. Just as Jirōemon was rejoicing, Tomoichi now called himself Goemon and had become an utter villain. Though Jirōemon had a dutiful son, he spent his days lamenting that his daughter Kofuyu might suffer hardship because of this.