翻刻
金兵へ
かとくお
つぎて
よりなに
ふそくもなけれはだん〳〵おごりにちやうじ日やしゆゑんをのみ事と
なしむかしのすがたは引かへていまはあたまも中ぞりをびんのあたり
までそりかみのけをば
ほんだにゆい
ねづみのしりをくらへこして
きもはくろはぶたへつくめ
おびはびろうとまたははかた
おりふうつう#1もうる#2なとゝ
出かけあらゆるとうせいの
しやれをつくせばるいは友を
もつてあつまるならいにて
手代の源四郎たいこ
持のまん八ざ
とうのぐ
壱なぞこゝろをあわせ
こゝを
せんど
とそゝ
なかし
ける
そのむかし金むら
や金びやうへ#3なれは
その名をとりて
しよ人きん〳〵
せんせいともて
はやしける
手代源四郎
げいしやを
よびあつめて
きん〳〵
せんせい
をそゝ
なかす
なんとだん
なうちでば
かりのさはぎ
はとんとさへ
ませぬあしたは
ほつこく#6へいき
山#7とおでかけ
なさりませ
よつや《割書:アヽヤニ引| 》しんじゆく
まくそのなかによ#4
女郎あるとはつゆしらず
きた〳〵
きたさ
ぬきの
こんひら#5
出ますところか
あらし雷し#8
たしか
かよふにか申ました
現代語訳
金兵衛は家督を継いでから、何も不足することがないので、だんだん贅沢に長じ、遊興や酒宴ばかりを事とするようになった。昔の姿とは打って変わって、今では頭も中剃りにし、鬢のあたりまで剃り、髪の毛は本多に結い、
鼠の尻を食らえこして、着物は黒羽二重尽くめ、帯は縞緒と博多織、風通や模様などと出かけ、あらゆる当世の洒落を尽くせば、類は友を持って集まる習いで、手代の源四郎、太鼓持ちの万八、座頭の具一などがこころを合わせ、ここを先途とそそのかしていた。
その昔、金村や金兵衛であったので、その名を取って、諸人「金々先生」ともてはやしていた。
手代源四郎は芸者を呼び集めて、金々先生をそそのかす。
「なんとも旦那、内でばかりの騒ぎはとんとつまらないものです。明日は北国へ、生駒山へとお出かけなさいませ。」
「四谷、新宿、幕の内によい女郎があるとは露知らず、北々、きたさ抜きの金毘羅、出ますところが嵐雷し、確かに通うのが申しました。」
英語訳
After Kinbei inherited the family business, having no want for anything, he gradually indulged in luxury, making entertainment and drinking parties his only pursuits. In complete contrast to his former appearance, he now wore his hair in a middle-shaved style, shaved around the temples, and had his hair done up in the Honda style.
He wore a mouse-tail obi cord, dressed entirely in black habutae silk, with striped obi and Hakata weave, fūtsū patterns and designs when going out. Exhausting all the contemporary fashions, birds of a feather flocked together, and clerk Genshirō, professional entertainer Man'hachi, and blind musician Guichi conspired together, urging him on as their ultimate goal.
Since he was formerly from Kanamura and named Kinbei, people took his name and praised him as "Kinkin-sensei" (Mr. Gold-Gold).
Clerk Genshirō gathered geishas to encourage Kinkin-sensei:
"Master, revelry only at home is quite boring. Tomorrow, please go out to the northern provinces, to Mount Ikoma."
"Little knowing that there are good courtesans in Yotsuya, Shinjuku, and Makunouchi, going north, north, without Kitasa, to Konpira shrine - the place where storms and thunder emerge - surely it was mentioned that one frequents there."