翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

食事戒 - 翻刻

食事戒 - ページ 28

ページ: 28

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【右頁】 兎(うさぎ)のみは穢(けがれ)なしと。是(これ)らの説(せつ)は。真理(しんり)におゐて当(あたら) ざるに似(に)たれども。世俗(せぞく)の意(こゝろ)に任(まか)せて可(か)なり ○世俗(せぞく)に人の好(このま)ざるものをこのんで食(しよく)し。興(きよう) なりとすれば。衆(しう)みな嗔物食(いかものぐゐ)也と歎称(たんしよう)【左ルビ「ほむる」】す。命(めい) をしらざるの族(やから)にして。論(ろん)ずるに足(たら)ず。すべて 菌(きのこ)などには。名(な)もしれざるあつて。人を傷(そこな)ふこと 多(おほ)ければ。軽率(けいそつ)【左ルビ「かる〳〵しく」】に食(くら)ふべからず。後悔(かうくわい)するに詮(せん)なし。 【左頁】 又/病(やまひ)あつて湯薬(たうやく)を用(もちゆ)るにも。異物(ゐぶつ)奇品(きひん)を好(この)む べからず。近来(きんらい)は種(しゆ)々の異薬(ゐやく)舶来(はくらい)して。木乃伊(みいら) サルボウのことき蕃語(ばんご)【左ルビ「ゑびすことば」】を唱(とな)へ文字(もんじ)すら知(し)れざる もの一(いち)二(に)ならず。紅毛(をらんだ)より携(たづさへ)渡(わた)るもの殊(こと)に多(おほ)し。 其/製(せい)其/性(しよう)。更(さら)に弁(わきま)ふべからず。たとへ其/効(かう)倍(ばい)すと いふとも。能(よく)々子細(しさい)にすべし。神農氏(しんのうし)百草(ひやくさう)を嘗(なめ)て 本草(ほんざう)を作(つく)り。日本(につほん)には少彦名命(すくなひこのみこと)《割書:五条天神|是なり》医薬(ゐやく)の

現代語訳

【右頁】 兎のみは穢れがないという。これらの説は、真理において正しくないように思われるが、世俗の考えに任せておけばよい。 ○世間では、人が好まないものを好んで食べて、風流だとすれば、皆が「いかもの食い」だと褒め称する。生命の道理を知らない連中であって、論ずるに値しない。すべてきのこなどには、名前も知られていないものがあって、人を害することが多いので、軽々しく食べてはならない。後悔しても仕方がない。 【左頁】 また病気があって薬湯を用いる際にも、異国の珍しい品物を好むべきではない。近年は様々な異国の薬が舶来して、ミイラやサルボウのような外国語を唱え、文字さえ知れないものが一つ二つではない。オランダから持ち渡されるものが特に多い。その製法やその性質は、全く判別できない。たとえその効果が倍するといっても、よくよく注意すべきである。神農氏が百草を嘗めて本草学を作り、日本には少彦名命(五条天神がこれである)が医薬の

英語訳

【Right Page】 Only rabbit is said to have no ritual impurity. These explanations seem not to accord with truth, but it is acceptable to leave them to worldly thinking. ○In the world, when people prefer to eat what others dislike and consider it elegant, everyone praises them as "exotic food enthusiasts." They are people who do not understand the principles of life and are not worth arguing with. Among all mushrooms, there are those whose names are unknown and which often harm people, so one should not eat them carelessly. There is no use regretting afterward. 【Left Page】 Also, when one has illness and uses medicinal decoctions, one should not prefer strange foreign items. In recent years, various foreign medicines have been imported, and there are not just one or two items with foreign names like "mummy" and "salvo" whose very characters are unknown. Those brought from Holland are particularly numerous. Their preparation and properties cannot be distinguished at all. Even if their efficacy is said to be doubled, one should be very careful. Shennong tasted a hundred herbs and created materia medica, and in Japan, Sukunahikona-no-mikoto (who is Gojo Tenjin) established medical pharmacology