翻刻
【右丁】
くもり墨の如く成る雲出て西風しきりにつよく
成りふりくる雨は■【篠】を乱しいなひかり電【雷ヵ】の
音やむ間なく天地もくつかへる斗り也小山の如くの
大浪打て舟をくつがへさんとすれはせん方
なく碇綱を切放しいづ地へ成り共はせ行
べしと帆を巻とも風雨はげしく綱ぬれ
てせびのめぐりもきしりて。はか〴〵しからず
帆も上られねどやう〳〵半合斗揚つゝ
【左丁】
いづくと当どもなく風に任せて沖の方へ
そ出て行是程之難風なれども岩にも当
らす船もやぶれもせずまだしも運のつよ
かり けん(ケン)流れて夜もふけしが雨も少しは
風も安(ヤス)く成る十九夜の月おぼろに見へさせ
給ふと程もなく夜はほの〴〵と明渡る夜
中の大浪梶いたみし故是を細工しつゝ
海四方を見るに山の気色は見へず磁石を