翻刻
【右丁】
静なれは皆々とらの間に打寄て言けるは塩家
の岬をはなれしより日数廿五日か■とかくして
走り殊に此海上は潮(シヲ)の得事 満(ミチ)し瀬戸を
落すより猶早く扨また針筋を見れは
西の方に打向凡二三千里も流れたれとも
山壱ツも見へ出ずはるかに山か雲かと見やれ
共風筋ならねは近(チカ)寄事も叶わず此まゝ船
中にて死すへしとなげきけれは《割書:其時|》仁兵衛■【悔ヵ】
【左丁】
言けるは我壱人か心にてかゝる難儀におふ
事【一字書損】せめては皆々のはらいせに今此海中に身
をしづめ死すへしと飛こまんとするけしき也
皆々是をとゝめ左様にあらすかゝる難儀におふ
事是皆々定業なりかならす入水する事無用
也といさめける扨もいつ陸地に着事やら知ね
はとかく喰物 徒(ツ)きざる様にと是より至極のけん
やくに也水一斗に米二升いれてかゆにだき廿人之