翻刻
【右丁】
尽はて水もきらし魚肉もなく成果てつい
に見もしらぬ人々ように成にけり十二月廿八日
に西南の方当て海上凡廿里斗りもあるへき
程に地方を始て見出しける皆々是に力を得
て願は地方の土に成へきと山を目当に命限り
にはせ近づきける其間一里斗り成し頃また風
かわりて西より東へ吹戻す次第〳〵山もとふざ
かりぬれは各気も落心たへいり凡五十日余りが間
【左丁】
海上にゆられ■々今日地方を見出せしに風か
わりて着もやらす又沖中に吹出され申
の年をくらしける明れは明和弐年酉正月成ぬ
去年津軽にて土産の為求置し松前昆布を思
ひ出し船底より取出し是を食す久振にて咽
を潤しける扨又風の吹まゝに流 走(ハシ)りける巳午の
方に行けるがいつ地とは知らねとも地方近き所成
ける《割書:去年塩家の津を出て今日|まて日数凡七十余日なり》扨橋舟を出し漕着て見れば