翻刻
【右丁】
たへずなり然るに酉の六月中頃に船方四
人乗たる舟子共かの弐人の者共に此船に
のれよと言により何かはしらねとも打乗はそ
らろくの湊を出船して十日ばかりの舟路を
得て小き湊に着船する在家のはし家に
宿をきはめ食事をあたへ決して弐人を外へ
出さず人の出入も制しける弐人ともに是はま
た何かなるうき目にあふ事よと安き心
【左丁】
はせざりけり■日数過て弐人か延し髪さ
かゆきをそらせ元腹させて日本ふうに髪
結せろしやの羽織を着せ近きあたりに舞台(ブタイ)
かと見へし所に連行太鼓をたゝきちやるめ
らをふき賑々して見へにける扨近辺の人
々集る事おびたゝしき也是皆見物人と
見へたり扨弐人に日本の歌をうたひてお
どり給へ舞給へとひたすらにすゝめける