翻刻
【右丁】
不図わずらい付食事もせずしてなやみける
孫七色〳〵とかいほうすれ共頼ずくなく見へ
ける船子とも甚だ気遣ひて練 薬(ヤク)をのませ
かた〳〵介抱(カイホウ)すれ共次第〳〵にをとろ へ(エ)て終に相果
ける是まて親とも子共兄 弟(ダイ)共互に力と思ひ
居しに其壱人相果し事なれは今は孫七只
壱人と成りいども心細く成りたよりなき事
限りなかりけり船子とも死(シ)骸(カラダ)を海へ打■躰
【左丁】
なる故余りの悲しきに色々と仕形をしてはびを
なし磯近く船を乗寄せさせて磯辺に上り地
を掘て死骸をうづみ念仏 数(カズ)十ぺんとのふ
る此死骸上る時に孫七船子共に手伝ふて呉よと
仕形おして見すれ共いかなくつぱきしてかむりふる
孫七思ふ様今は我々今は只壱人なり終に て(は)斯の
ことく成り行へしさ有時はたれかケ様にわほふ
むり念仏して筈るやらんと思へはいとじ頼