翻刻
【右丁】
ずくなく暫らく打伏枕もあげざりけれは舟子
共是も又死するならんと思ひけん船頭練薬
を以て来り孫七が口えのませんと水をいれんと
しける時孫七むつくとおき上れはきやつらも
あんどの思ひをしけると見へたり孫七は悲(カナシ)
しき中にもおかしき次第也此海上は行通ふ
船多くして見なれぬ帆をかけ吹流しを立
左右へ走ル違ふ船数多なり扨中の日(ヒ)数凡四十二日
【左丁】
天気もよく打 続(ツヾキ)船はかも行と見へて
海路凡二千里もや有つらんと思へり爰に
大成湊有しからも広き川口也此川に船走
り二■それより直に川中を十里計り乗行て
また爰に湊有人家も数多有ける斯て爰に
着キ碇をおろし橋舟を下してかの乗せたる
男女を方々に連まはり売様に見へける此所は
黒坊国かいだにト言国の内なり此舟着在家