翻刻
【右丁】
聞扨孫七も問屋に揚つて思ひけるは今迄
諸々を廻りてうきかんなむに身を労せしか
かゝる所はあらさりし也自然日本へ帰る事もや
とすへたのもしく思へり扨孫七さかやき
長くのひいろ黒く成りて以前の姿は少し
もなかりけり扨又日本人を珎らしく思ひける
にや此家の主奥より出る家内の者も皆立
出て我を見物する也其時我日本の勢ひを
【左丁】
見せんと目を大きにむき出し口を広くし
少々成り共■たを高く見せたりきやつら我
を見てみな〳〵笑ふ我また家内の人を見るに
老女壱人有り若き女弐人有其姿生た観音を
見るに似たり台所と思しき所には下女と見へし
女も有り夫より我を台所に連行食事などを
あたへり下男と見へし者十二三人有手伐と見へ
し者弐人都て家内人数多し分限有とは見へた