翻刻
【右丁】
つよけれは是をよけん為十月初まて小
渕之湊に滞留す十月十四日の夜水夫
弥吉と言ものふしぎの夢を見る其姿
内裏きさきのごとく十弐ひとへを召れ
たる御方どらの間の神棚ゟ立出たまひ
我わ小渕の湊に待べしとの給ひ岡の方
へ飛去給ふ異香(イカウ)四方にくんじてゆめはさめ
にけり弥吉不思議に思ひけれとも若き者の
【左丁】
なまじいなる事を言出してちやうろ■【へヵ=嘲弄】しら
れんも口をしかるべし殊更明朝は舟を出すへき
とて綱手の用意もある中にいらさる事を
いふまじと思ひ留りぬ是後弥吉ものか
たりしける小渕湊に船を入るには奥州の東
に当つて金花山の際廻りて入湊なり
此金花山は地方より海上三里沖に有嶋
の廻り五里有金銀すいせうをいて築たる