翻刻
【右丁】
Ds(デウス)ヲ有智有徳(ウチウトク)ト云ハ落(ラツ)
居(キヨ)スムヘカラス総(ソウ)シテ智慧(チエ)アル
処(トコロ)ニハ憎愛(ゾウアイ)簡択(ケンチヤク)ナクテ叶(カナ)ハ
ス憎愛(ゾウアイ)簡択(ケンチヤク)ハ人間気( ゲンノキ)也
憎愛(ソウアイ)アルDs(デウス)ナラハ共(トモ)ニ量(ハカ)ルニ
不(ス)_レ足(タラ) 猶(ナヲ)此 ̄ノ理(リ)ヲハ後(ノチ)ニモ教(ヲシ)
ユヘシ去(サレ)ハ法性(ホツシヤウ)ハ如_二大海( カイノ)_一
不(ス)_レ説(トカ)_三有(アルコトヲ)_二是非(ゼヒ)_一ト云コソ真(シン)
実(シツ)ナレ又Ds(デウス)ハ有徳(ウトク)ト云テ
是(コレ)ニ誇(ホコ)ル猶(ナヲ)又 一毫未断( ガウミダン)
【左丁】
ノ凡夫(ボンブ)ノ説(セツ)也 上徳(シヤウトクハ)不(ス)_レ徳(トク)
是(コヽヲ)以 ̄テ有(アルト)_レ徳(トク)人ノ上(ウエ)ニサヘ云
フナルニDs(デウス)ニハ是是(ゼゼ)ノ徳(トク)アリト
云ハ却(カヘツ)テ《振り仮名:不-足|フソク》千万(センバン)老子(ラウシノ)
夷(イ)《割書:無色|》希(ケ)《割書:無音|》微(ヒ)《割書:無形|》
之 三字( シ)ヲ挙(アケ)テ此(コ)ノ三ノ者(モノハ)
不(ス)_レ可(へ)_レ致(イタス)_レ詰(ケツスルコト)右三ノ者(モノ)ハ見(ミ)
ル事モ不(ス)_レ得(エ)聞(キク)事モ不(ス)_レ得(エ)
取(トル)ルコトモ不(ス)_レ得(エ)言語道断(ゴンゴダウダン)
ニシテ書(シヨ)ニモ伝(ツタ)ヘラレストイヘルコソ
現代語訳
【右丁】
デウスを有智有徳と言うのは落ち着きがない。総じて智慧がある所には憎愛簡択(好き嫌いの選択)がなくては叶わない。憎愛簡択は人間の気質である。憎愛があるデウスならば、共に量るに足りない。なおこの理は後にも教えよう。されば法性は大海のようであり、是非があることを説かないと言うのこそ真実である。またデウスは有徳と言って、これに誇るのは、なお又一毫未断
【左丁】
の凡夫の説である。上徳は徳とせず、これを以て有徳と人の上にさえ言うなるに、デウスにはこれこれの徳ありと言うのは、かえって不足千万である。老子の夷(無色)希(無音)微(無形)の三字を挙げて、この三つの者は詰問することができない。右三つの者は見ることも得ず、聞くことも得ず、取ることも得ず、言語道断にして書にも伝えられないと言うのこそ