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節用料理大全 - 翻刻

節用料理大全 - ページ 70

ページ: 70

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【頭書右】 鮒(ふな)粕漬(かすつけ)は一 夜(や)しをゝして かすにつけ。をしをつよく かけ置候へは。五日六日のうち につかはれてよし 『味噌汁塩の取様』 魚の汁(しる)魚の塩 辛(から)きか みそ塩からき時。水にてのべ れは味噌うすくなる時 くろ米の飯(めし)こはいゝのごとく に焼(たき)菜袋程の布袋へ 入。但し七分め。右みそ汁の中へ 入れ一にえ程たき立る。塩の からみ忽(たちまち)とれ上々の汁と成る 極秘伝(こくひてん)也。右の食 用(やう)ゐなき 時は常のめしにてもよし 『《割書:合|類》食物(しよくもつ)日用(ちにやう)能毒(のうとく)』 【頭書左】 『諸鳥(しよてう)能毒(のうどく)書(かき)』 ▲つる《割書:あぢしははゆく|へいの物》【しわはゆい=塩からい=鹹】【五味五性についてはこのコマの最後に注をつける】   らう気おぎない気力ます【労気(らうげ)ならば病気のこと。癆気(らうき)ならば肺結核、労咳と同じ。】   風(かせ)をさつてむしによし肺(はい)   すくやかになす物中風を【中風:脳卒中】   さる白き鶴しよくすべし   百病にくすり也 ▲がん あまくへいの物【甘・平】   中風手あし引によし   かたみのなへたるに少づゝ   常にくふべし   気をめぐらし耳(みゝ)きこへ   ぬによし六七月に食   するな人のたましいやぶ   る物夏ないりこきん物也【夏菜、いりこ、禁物也/禁物とあるのは食い合わせの悪い食べ物の事で、嫌ふと書いてある物も同じである】 ▲かも 【下段右】  きれぬやうに耳迄念を入。たゝき。なべに昆布を敷其  上にあはびを置からをふたにしてみそ汁にて煮申候 一水と酒と等分にしてうすきふくさ味噌の位に多く。  蚫のからの上迄汁の有程入。半分程も煮候へば右の  みそ汁大方ねりみそ位につまり候。其時取出し塩ふり  ても葛だまりにても其まゝよく候【合類日用料理抄「○鮑和煮様」】 『▲万肴の拵様并卵の仕様』 卵をつぶし水将由か出し将由か入常のごとくいたし候  酒を入申せはあしし。鍋へつよくこげ付申候。大方能出来申  じぶんなべの内の卵。あそこ爰にあなあけ。いり酒を  水にてうすくのべ候てつき込(こみ)少し煮てよし【同「○卯ふは〳〵」】 切卵(きりたまこ)はたまごをつぶし能ときませ玉子五つに葛(くす)の粉(こ)  こい茶一ふく程入ふのやきに焼也。いかにも火をゆるくし  て玉子を少入成程うすくやき申候。扨 細(こまか)く切いりさけ  にてもさし味にても。煮物なます取肴にもつかい申候【同「○切卵」】 【下段左】 ▲巻(まき)玉子(たまこ)はたまごのふの焼(やき)にかま鉾(ほこ)をつけ。其  うへにあらめをならべきり〳〵とまきうへをゆい  塩を少しくあゑゆて候てきり出し候也【料理物語「まきかまほこ」/合類に「巻卵」があるが内容は違う】 ▲巻(まき)するめはするめをあらひくずの粉をすこし  ふりまきわらにてゆひ候てゆにをしさまし切候【料理物語「まきするめ」】 ▲玉つさとはからすうりのさねなり。きんぶんしとも  いふ。たまりにていりあげてよし。其外あんにん【杏仁】  たうにん【桃仁】くろまめからかわ【辛皮】しやうがなどもくはへ  てよし。夕がをのたねも仕り候【料理物語「玉つさ」】 ▲切さんせう 山升の内の白みを取よくすりて。花  がつをみそをくはへ候。かげんはからみよき程にこれ  あるべし。つくねひらめ細(こまか)に《割書:一分四方|》に切。よくほして  なをほ色にかけてちんひも入たまりくはゆる【料理物語「きりざんせう」】 ▲めまき 山のいもをあらめにてまき。ゆで候て色々  にきり候。是もくずのこすこしふるなり【料理物語「めまき」】 【五味・五性について、注ここから】  このコマの頭書左から最後のコマの頭書まで、食物の薬としての効能と毒性について書かれている。ほとんどすべての食物に「あまくへいのもの」等と書かれているのは五行説に基づく五味・五性である。通常、五味は酸(さん)・苦(く)・甘(かん)・辛(しん)・鹹(かん)の五味で、五性は熱(ねつ)・温(おん)・平(へい)・凉(りょう)・寒(かん)であるが、この資料では次のような言い方になっている。 【五味】 酸 すゆく○○、○○には五性が続く、以下同 苦 にがく 甘 あまく、甘く、甘 辛 からく 鹹 しははゆく、しはゝゆく、しははゆし…「塩辛い」の意 甘酸 あますゆく、甘くさんのもの 甘苦 あまにがく 甘鹹 あましははゆく 苦酸 にがすゆく  五味はすべて大和言葉になっており、甘(かん)と鹹(かん)の取り違えはない。また「甘く○○」のように後ろに五性が続く言い方がほとんどであり、甘(かん)や鹹(かん)を寒(かん)と取り違える心配はなかった。  なお、鹹は中国語で塩味のことである。 【五性】 熱  ねつの物 大温 大うんの物 温  うんの物 平温 平うんの物 平  へいの物 凉  れいの物、れいなり、[ひへ物、ひゑ物] 寒  かんの物、[ひへ物、ひゑ物] 大寒 大かんの物、[ひへ物、ひゑ物]  「ひへ物・ひゑ物」は体を冷やすもので、凉または寒のもには違いないが、どちらにあたるか当資料だけでは判断できなかった。 【かんの物とうんの物について】  寒(可ん)と温(宇ん)は字形が似ているため判断が難しく、効能に腰をあたゝめなどとあれば「うん」、逆に「熱を冷ます」などがあれば「かん」と判断したが、どちらとも判断のつかない例は読み間違いがあるかもしれない。 【注ここまで】

現代語訳

【頭書右】 鮒の粕漬は一夜塩をして 粕に漬け、重しを強く かけ置けば、五日六日のうち に使われて良し 『味噌汁の塩を取る様』 魚の汁で魚が塩辛いか 味噌が塩辛い時、水にて延ばせ ば味噌薄くなる時 黒米の飯をこわ飯のごとく に炊き、菜袋ほどの布袋へ 入れ、但し七分目。右味噌汁の中へ 入れ一煮えほど炊き立てる。塩の 辛みたちまちとれ上々の汁となる 極秘伝なり。右の食用いない 時は常の飯にても良し 『合類食物日用能毒』 【頭書左】 『諸鳥能毒書』 ▲鶴 味は塩辛く性は平の物   労気を補い気力増す   風を去って虫に良し、肺を   健やかになす物、中風を   去る。白き鶴を食すべし   百病の薬なり ▲雁 甘く平の物   中風で手足の引きつりに良し   片身の萎えたるに少しずつ   常に食うべし   気を巡らし耳の聞こえ   ぬに良し。六七月に食   するな。人の魂を破る   物。夏菜、煎子は禁物なり ▲鴨 【下段右】  切れぬように耳まで念を入れ叩き、鍋に昆布を敷きその  上に鮑を置き殻を蓋にして味噌汁にて煮申し候 一 水と酒と等分にして薄きふくさ味噌の位に多く、  鮑の殻の上まで汁のあるほど入れ、半分ほども煮候えば右の  味噌汁大方練り味噌位に詰まり候。その時取り出し塩振り  ても葛とろみにてもそのままよく候 『▲万肴の拵え様並びに卵の仕様』 卵を潰し水醤油か出汁醤油か入れ常のごとくいたし候  酒を入れ申せば悪し。鍋へ強く焦げ付き申し候。大方よく出来申す  時分、鍋の内の卵、あちこちに穴開け、煎り酒を  水にて薄く延ばし候てつき込み少し煮て良し 切卵は卵を潰しよく溶きませ、卵五つに葛の粉を  濃い茶一服ほど入れ、麩の焼きに焼くなり。いかにも火をゆるくし  て卵を少し入れ成るほど薄く焼き申し候。さて細かく切り、煎り酒  にても指し味にても、煮物膾取肴にも使い申し候 【下段左】 ▲巻卵は卵の麩の焼きに蒲鉾をつけ、その  上に荒布を並べ、きりきりと巻き上を結い  塩を少しく加え茹でて候て切り出し候なり ▲巻するめはするめを洗い葛の粉を少し  振りかけ巻き、藁にて結い候て茹で、押し冷まし切り候 ▲玉つさとはからす瓜の実なり。金分子とも  いう。溜りにて煎り上げて良し。その外杏仁  桃仁、黒豆の辛皮、生姜なども加え  て良し。夕顔の種も仕り候 ▲切山椒 山椒の内の白身を取りよく摺りて、花  鰹味噌を加え候。加減は辛み良きほどにこれ  あるべし。つくね平目を細かに一分四方  に切り、よく干して  なお色にかけて陳皮も入れ溜り加ゆる ▲目巻 山の芋を荒布にて巻き、茹で候て色々  に切り候。これも葛の粉少し振るなり

英語訳

【Header Right】 For crucian carp pickled in sake lees: salt for one night, then pickle in lees, placing heavy weights strongly on top, and it will be ready to use within five to six days. 『How to Remove Salt from Miso Soup』 When fish broth has fish that is too salty or the miso is too salty, if you dilute with water the miso becomes thin, so cook black rice like hard rice, put it in a cloth bag about the size of a vegetable bag, filling it seven-tenths full. Put this into the above miso soup and bring to a boil once. The saltiness is immediately removed and it becomes excellent soup. This is a closely guarded secret. When the above food is not available, regular rice is also fine. 『Classified Foods for Daily Use and Their Medicinal Properties』 【Header Left】 『Record of Various Birds' Medicinal Properties』 ▲Crane: salty in taste, neutral in nature   Supplements exhaustion qi and increases vitality   Removes wind and is good for parasites, makes lungs   healthy, removes apoplexy   White cranes should be eaten   Medicine for a hundred ailments ▲Wild goose: sweet and neutral   Good for paralysis of hands and feet from apoplexy   For paralyzed limbs, eat small amounts   regularly   Circulates qi and is good for   hearing loss. Do not eat in June or July.   It destroys people's souls.   Summer vegetables and roasted seeds are forbidden foods ▲Duck 【Lower Right】  Pound carefully up to the edges so they don't tear, lay kelp in a pot and  place the abalone on top, using the shell as a lid and simmer with miso soup One: Use equal parts water and sake, adding thin fukusa miso in large amounts,  enough liquid to cover the top of the abalone shell. After simmering about halfway, the above  miso soup reduces to about the consistency of kneaded miso. At that time, remove and sprinkle with salt,  or use kudzu starch for thickening, both are good as is. 『▲Preparation Methods for Various Delicacies and Egg Dishes』 Crush eggs and add either water soy sauce or dashi soy sauce as usual  Adding sake is bad. It burns strongly to the pot. When it's mostly done well,  make holes here and there in the eggs in the pot, dilute iri-zake  with water and pour in, simmering briefly, which is good. For cut eggs, crush the eggs and beat well. For five eggs, add kudzu powder  about the amount of one thick tea serving, and cook like fu-no-yaki. Keep the fire very low  and add eggs little by little, cooking very thin. Then cut finely and use with iri-zake  or as seasoning, in simmered dishes, vinegared dishes, or appetizers. 【Lower Left】 ▲For rolled eggs, add kamaboko to the fu-no-yaki eggs, then  line arame seaweed on top, roll tightly and tie the top,  add a little salt and boil, then cut to serve ▲For rolled squid, wash the squid and sprinkle a little  kudzu powder, roll it up, tie with straw and boil, then press while cooling and slice ▲Tamatsusa is the seeds of crow melon. Also called  kinbunshi. Roast in tamari soy sauce until done. Additionally, apricot kernels,  peach kernels, black bean hulls, ginger, etc. can also be added,  which is good. Bottle gourd seeds are also prepared this way ▲Cut sanshō: Remove the white part inside sanshō and grind well, then add dried bonito  miso. The proportion should be pleasantly spicy.  Cut ground flatfish finely into one-bu squares,  dry well, add more color and include dried citrus peel, adding tamari ▲Eye rolls: Wrap mountain potato in arame seaweed, boil and cut  in various ways. Also sprinkle a little kudzu powder on this