翻刻
【右丁】
みつからの武勇によりて攻取たる所也いかてたやすう
人手には渡すへき北条望たまはんには御勢を給てせめ
とらるへうもや候と仰られ候へと答まいらせて上杉の
家人須田《割書:相|模》島津《割書:淡|路》につきて景勝に申けるは昌幸
むかし北条にしたかひ屋形にそむき参らせし事
既に本意を失ひ後悔又及かたしむかしの罪をなため
られ今の難をすくひ給んに子息源二郎幸村して
なかく御家人の列にしたかはしめ又侍百騎常に御陣に
したかつて御馬の草■【刈ヵ】せなんいはんや昌幸か二心を
存せす微忠を抽んて候わん事此誓にたかふ事有へからすと
【左丁】
牛王宝印のうらをもつて起請文かきて奉る景勝をり
ふし越後の国新発田の城攻て居たりしか此由を聞て
真田めかはしめ景勝をそむきて北条にしたかひ北条
を見あなとつて家康に降り今家康をうらみ
てよりかたなく又景勝を頼まんとよくせんかたやなからん
およそ乱れたる世の習にてかれをさりこれにつき是を
そむき彼にしたかふ其例すくなからす窮鳥ふところに
入時は猟者もこれをあはれむといふ本文あり今かの
前悪をにくみて此急難をすくはずんは彼恩に亡なん
事も不便也又家康の武勇におそれて景勝事を左右に