翻刻
【右側】
ひたすらに神仏を祈るの外他事もなくうつほ舟に
やとる身は空蝉のうつせ貝の腹をかゝへかねてそ有ける
二月二日にも及し朝影に島か鳥かとうたかひ見その
中に段〳〵と近寄来るを見渡せは異国の舟にて
有けるか碇も入れす段〳〵とまきり帆にて我舟の側近
く乗廻しなから小舟をおろし幾度も我舟を打
廻り其末我舟へ漕付けてんまに鉄炮五挺餝り備
【左側】
異国人四人我舟に乗移り何か詞を申せとも分ら
さるまゝに仕方にて酒をくれよとの模様を悟り恐し
さのあまりには随分可遣との仕方を致せは又一艘てん
まをおろし荷物の内酒三十丁砂糖十八丁積取にし
けるゆへ此上は舟に残り居ても給物なけれは落命早し
と乗組共相互に申合せせんかたなくとても命は
なき物とおもひはまりて異国舟に乗うつりぬ