翻刻
【右側】
二月二日より異国舟に乗うつり三月十六日此舟碇
を入昼頃より此所にかゝり十日はかりは湯水をあたへ
其後日本人には決て湯水を与へす然れとも舟仕事
には日本人も遣ひけるゆへ身心労るゝ斗にて側なる人も
貌二ッに見へる程に悩み果ける然るにその夜五ッ過頃
皆々伏居けるを起してんまに乗せ岡へこき付その内
七人上陸させ異国舟はその夜卒に出帆しけるその時
【左側】
七人の者何と致すへき様なく互に只見合せ物いはす
しらぬ国の磯はたに捨られ互に愁歎の外他事なし
やゝして案するに昼の内に水取に上りしゆへ水をくに
あらは一口つゝ呑なんと其内達者なる者一人小道の
有けるをたどり一丁斗り行て見るに二軒家あり直に
立戻り六人の者にしらせける故十六日の夕さやかなれ共
とぼ〳〵たどり件の家ある所迄着一軒の戸を敲け