翻刻
【右側】
なる物有けるも段〳〵と近寄るを見れは碇二ッ入
跡しさりに流るゝ迄にしてその舟少し隔り帆を
おろしけるとき時に双方より喚き合ふ我舟は帆柱楫
なけれは近よる事不叶只暮けり明日あの舟より
近寄くれんと夜の明るをたのしミ相待けるに夜の
白ミたる頃見渡せは何かたへ行けん舟の影たに見へ
さりける
【左側】
此舟奥州仙台の舟是も難風に吹放され帆
柱切捨漂流せり併是は米穀荷物の舟にて
我舟と違ひ粮米潤沢にて難なく其末唐土
へ漂着せしか我等ゟ二年前我舟の船頭善助と
一同に唐船より帰朝の事太吉唐土迄戻り
来りし時唐土役場にて其事を承候
扨明ても暮ても粮米なくして露命つなく事