翻刻
【右側】
不叶あまたの日数重りける内舟の浮ミたる汐際
より下に汐に湿りたる所に出来る物あり是は所替り
潮の菜にや牡蛎うにがせの出来る様ならん長サ二三寸に
して丸ミ指の廻りはかして其中半分の先も貝
の《振り仮名:実|身》ありよく凪たる日和に是を取にも舟人替り〳〵
船中に小網をかけ舟にくゝり付置海中に飛込舟の
脇に置るかき体の物を諸手をかけ引もぎ舟より釣
【左側】
さけ置たる小桶へ入是も食事のたしにそしけるある
時また不思儀なるは海上に住る大鳥舟の内へ飛入たり
翅ひろけたる時は六七尺もあらんか是をとらへ此鳥こそ
我々飢の助けにも成なんと殺しにかゝらんとする時又
その中に申はまてしばし我々大難にあひ万死一生と
いふは此時也斯る時生ける物の命をたち我々か飢をし
のがん事勿体なし生けて放ちやらん事善かるへし