琉球・沖縄の世界を翻刻する

コレクション: ハワイ大学所蔵 阪巻・宝玲文庫 vol. 1

琉球解語 - 翻刻

琉球解語 - ページ 17

ページ: 17

翻刻

の恨おもひ知れと。柄も通れ。拳も通れと刺通され。 あつといふと立上るを。返す刀に首打落せは。酔潰(ゑひつぶ) れたる従者ども。此躰を見て肝を潰し。上を下へと 狼狽す。二人の童子は透間もなく四才八面を切て廻り 悉く切殺し。本望を遂たるを一局(ひとくだり)とす ○又鐘魔といふ狂言あり是は謡曲(うたひ)の道成寺に似 たり。中城(なかくすく)の姑場村(こしやうそん)といふ所の農家(ひやくせう)に。陶姓なる 者あり。一子を松寿と名付く。齢まさに十五歳。 誠に端麗の美少年なり此国の都。首里に師あ りて。常に徃通ひ□業(きやう)を□□り。一日/浦添(うらそへ)の山径(やまみち) にをりける時。日暮に及ひて路を失ひ。とさまかうさ まに踏迷ふ程に。次第に昏黒(くらやみ)になりてあいろも 分ず。小竹を折て杖となし。其■に此■よとたどり しがほのかに火影の見えければ松寿そゞろ嬉し くて火影を便りに路をとり。辛うして其家□□□。 一チ夜の宿りを求めける。此家の主は猟人にて。一人の 娘を持てり。山家には生立(おいたて)とも。天姓の嬌態あやしき まてにあてやかなり。年わつかに十六歳此■■は猟 に出只一人留主居してありけるが。門に人のお□なひして 知ぬ山路にさまよひたる者にて何とふ情に御宿たまは りたしと。いふ■声もかきくれたり。娘いたはしくは思ひけれ とも。折ふし父の留主といひ。心一ツに定めかねしが□だ いはけなき人といひ殊さら信したる人もなけれは。さまで に父のとかめもあらじと門の戸開きて庵にともなひ彼是 いたはりもてなせしが。松寿が姿のいつくしきに心ときめき 事に触て挑(いどみ)けれとも松寿もとより物賢き生れにて いさゝかもうけむかず□□もやらず□し居たり。娘思ひ にせまりてやひし〳〵と抱き付ば。松寿驚き。衣を振ふて 起上る。娘今は恨のあまり。難面(つれなき)人を生しは置じ。同じ 冥途へともなはんと。道具を取て飛懸る。松寿は魂(たましい)の天に 飛夢路をたどる心地して。足を空に迯出すを何国まで も登□来る。其早き事飛鳥の如し松寿やう〳〵迯 延て此山の曲にある万寿寺といふ寺に駈入しか〳〵の由 を物語れは住持普徳といふ僧は。行徳いみしく。才覚 ある僧なりければ。すなはち松寿を鐘楼へともなひ。大鐘 の内に伏しめ三人の従弟をして。其■辺を看守し