翻刻
【右丁】
木村これにて参りたり須賀殿に参会して申す
へき事候とそいわせらる須賀頓て商人の家彼旅館
に点して出むかふ秀吉修理に対面し我は是羽柴
筑前守秀吉也景勝と見参し申すへき事あつ
て来りたり 案【按は誤】内者こふて春日山におもむかふと
思ふにいかにとありけれは須賀不背には侍る共某
かくて候へは仰られん事あらは承てこそ景勝には
申つたふへきなれたやすく通し申さん事かなふ
ましきにて候とそいひきつたる秀吉さらは早馬を
参らせて景勝にかくと申せ秀吉かいはん事汝か
【左丁】
聞へき所にあらすと仰られけれは承りぬと申て羽柴殿
をは城中にいれ参らせさま〳〵に饗応しける此時
景勝は柴田か伯父刑部左衛門尉かこもりたる新潟
の城をせめんとて蒲原郡にむかひしか秀吉越中
に攻入と聞て羽柴か起請かきて我によしみむすはんと
いふ共みたれたる世の人の心はかりかたしとて其勢八千
六百にて越後越中の境なる厭川の 城に陣したり
落水の城よりは無碍にほと近けれは 須賀飛脚
して此よしを告る秀吉をうたせ給はんには御勢給る
まても候はす某とつて参らせんとそ申ける景勝聞て天下