翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書】
にてすりてふくべし
○すべて染物類(そめものるい)鹿子(かのこ)等(とう)に物
のしみたるは流(なが)れ川にてあらふ
べし白きものは木槿(むくげ)の葉(は)をも
みつけてあらへばしみものよく
おちて葉(は)の青(あを)みはつかぬ也
○漆紋(うるしもん)をおとすには海蘿(ふのり)を
ときてあらふべし久しくふりても
よくおつる也
○紋所(もんどころ)のうるみたるは橙実(だい〳〵)の
汁をしぼり紋所(もんどころ)にぬりてぬれ
たるうちにうどん粉(こ)をふりかけ
干(ほし)てはらひおとすべししみ物
あかの類(るい)こと〴〵くおつるなり
○藍染(あゐぞめ)の色をぬくには石灰(いしばひ)を
あくにたれ絹(きぬ)をいれて煮(に)れば
白絹(しらきぬ)となるなり
【左丁頭書】
○茶染(ちやぞめ)の色をぬくには酒(さけ)に
水少しさして煮(に)ればぬけて
もとの白地(しらぢ)となる也
○黒(くろ)き絹(きぬ)を洗(あら)ふには濃(こ)く煎(せん)
じたるくちなしの汁にてあらふ
べし色よくなる也又 風(かぜ)ふく日に
黒糸(くろいと)のぬひ物すれば糸(いと)のつや
おつるなり心得おくべし
○茶色(ちやいろ)の衣に白(しろ)きほし出たる
は烏梅(うばい)をこくせんじて筆(ふで)にて
ほしのうへをぬればもとのごとく
に色(いろ)なほる也
○羅(ら)せいたの垢(あか)をおとすは新(あたら)し
き草履(ざうり)のうら又はわらづのう
らの毛(け)にてそろ〳〵とすれはよく
おつるなり
○衣(きぬ)の垢(あか)を灰汁(あく)にてあらふは
【右丁本文】
一 西瓜(すいくわ)に中(あた)りたるは番椒(たうがらし)を水にひたしてその
汁を飲てよし甜瓜(まくはうり)に中りたるは塩(しほ)を湯(ゆ)に
かきたてゝ吞(のむ)べし酒もよし
一 菌蕈(くさびら)【「タケ」左ルビ】の毒(どく)にあたりたるには地(ぢ)を掘(ほり)て水を
そゝぎ入れかきまぜ其水の澄(すむ)をまちて多(おほ)く
飲(のむ)べし又 古壁(ふるかべ)の土(つち)を湯(ゆ)にたてゝすまして飲
もよろし又ごまの油(あぶら)もよし山梔子(くちなし)を剉(きざ)
みて水にて飲もよろし又 茶(ちや)の芽(め)を粉となし
水にてのむもよし甚(はなはだ)しきに至(いた)らば人(ひと)の糞(ふん)
汁(じう)を飲べし此方(このはう)一切(いつさい)の毒(どく)に中りたるに大に
妙なり又 松茸(まつたけ)にあたりたるは豆腐(とうふ)を食(くひ)て
よろし又 茄子(なすび)もよく毒を解(げ)する也
一 酒(さけ)の毒(どく)にあたりたるには菉豆(やへなり)また赤小豆(あづき)
【左丁本文】
などよろし菘菜(あをな)の煮汁(にしる)生藕(なまばすのね)の汁もよし
葛(くず)の花 九年母(くねんほ)の皮(かは)桑椹(くはのみ)沙糖(さとう)いづれもよろし
また眼子菜(がんしさい)【「ヒルモ」左ルビ】を焼(やき)て灰(はひ)となして服(ふく)すせんじて
用るも妙なり
一 焼酎(しやうちう)に中りたる人に冷水(ひやみづ)を飲(のま)しむべからず
のめば忽(たちまち)に死(しす)るもの也 温湯(あたゝかなるゆ)の中へいれて体(からだ)を
あたゝむれば毒(どく)おのづから解(げ)す又 赤躶(はだか)になり
てころ〳〵ところげ廻(まは)れば吐却(ときやく)して愈(いゆ)る也
又方 好錯(よきす)を二三 盃(はい)のむもよし大根の汁 胡瓜(きうり)
甜瓜(まくは)の搗汁(つきしる)葛湯(くずゆ)甘草(かんざう)の粉などいづれも妙也
一 油(あぶら)あげものに中りたるは九年母(くねんほ)の皮(かは)せんじ用ゆ
一 諸(もろ〳〵)の魚毒(ぎよどく)に中りたるには干鮝(ひずるめ)を水に煎(せん)し
て服すべし又 冬瓜(かもうり)をすりて汁をのむもよし
【枠外】
広益秘事大全 六十五