翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書】
○家(いへ)のひろさは常(つね)を本(もと)とし
客(きやく)ある時は少しせばきほどなるが
よし但(たゞ)し分限(ぶんけん)によりて礼式(れいしき)の
欠(かぐ)るなどはよろしからず器物(うつはもの)を
おく處は随分(ずいぶん)と広(ひろ)きがよし
又少し無用(むよう)の所あるもよし
是(これ)は無用(むよう)の用にて思ひのほか
用(よう)にたつ事あり又 風流(ふうりう)にも見
えておくゆかしきもの也
○家(いへ)はあまりに高(たか)く作(つく)るべからず
風(かぜ)あて強(つよ)くして破損(はそん)おほし又
床(ゆか)は高きがよし湿気(しつけ)をさけ
て病(やまひ)をふせぐ也
○家(いへ)は陽(やう)にむかひ陰(いん)に背(そむ)くべし
是 自然(しぜん)の理(り)なるうへにたがへば
かならず作廻(さくまひ)わろし南(みなみ)は陽(やう)也
北は陰(いん)なり南を表(おもて)にして北を
【左丁頭書】
裏(うら)とすべし家(いへ)の内 明(あき)らかにして
日あたりよく月(つき)にむかひて風(ふう)
景(けい)よしそのうへ夏(なつ)涼(すゞ)しく冬(ふゆ)暖(あたゝ)
かなるものなりその次は東(ひがし)を表(おもて)
とし西(にし)をうらとすべし東は
陽(やう)なり西は陰(いん)なりもし東を
ふさぎて西を明(あく)るときは夏(なつ)は
夕日(ゆふひ)さし入て東風(こちかぜ)入ず冬(ふゆ)は
西風(にしかぜ)吹(ふき)入て朝日(あさひ)ああたらずもし若(もし)
止事(やむこと)を得ずば広間(ひろま)座敷(ざしき)は
西北むきに作(つく)るとも居間(ゐま)は必(かならず)
東南むきにつくるべしこの理(り)
にたがへばかならず勝手(かつて)あしき
ものとしるべし
○山岸(やまぎし)にそへて家(いへ)を作(つく)るべ
からず湿気(しつけ)人の身(み)を犯(おか)して
毒(どく)となる也三四 間(けん)ほども放(はな)ちて
【右丁本文】
【挿絵】
瘡口(きずぐち)にあてておさへ上を布(ぬの)にてまくべし猶(なほ)
も大なるは焼酎(しやうちう)暖酒(あたゝめざけ)にて洗ふべしもし酒(さけ)
類(たぐひ)なき所ならば早(はや)く小便(せうべん)をしかけてよし
又 人糞(にんふん)をつくるもよし但(たゞ)し人によりては
【左丁本文】
さやうにもなりがたき事あるべしその時は
何にても金(かね)を火(ひ)に焼(やき)て赤(あか)くなりたるにて
瘡口(きずぐち)へ直(ぢき)にチヨイ〳〵とあつべし是にて血(ち)
のとまらぬ事はなきもの也 小創(こきず)は灸(やいと)をす
ゑるもよろし血(ち)とまりたる後は鶏卵(たまご)の
しろみ黄身(きみ)ともにませて布(ぬの)にひたし瘡(きず)を
まき其上を乾(かわ)きたる布(ぬの)にてまきて外科(げくわ)
医者(いしや)の来(きた)るを待(まつ)べし
一 手足(てあし)などの動脈(どうみやく)を切たる時は血(ち)糸(いと)のごとく
はしりいでゝいかにしても止(とま)らぬもの也其時は
腋(わき)の下(した)と股(もも)の付根(つけね)に動脈(どうみやく)ある處を強(つよ)く押(おさ)
ふれば脈(みやく)とまりて血(ち)はしらずその隙(ひま)に血(ち)を
止(とむ)る術(じゆつ)を尽(つく)して瘡(きず)をまきたてゝよし
【枠外】
広益秘事大全