翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書】
【挿絵】
たつべし又あたらしき壁(かべ)の未(いまだ)
乾(かわ)かざるにその壁(かべ)ちかく居臥(きよぐわ)す
べからず中湿(ちうしつ)の憂(うきへ)あるべきなり
ふかくつゝしむべし寝所(しんじよ)居室(きよしつ)
に近(ちか)く池(いけ)みぞをほるべからず
湿気(しつけ)人身(ひとのみ)に入りて毒(どく)となり
家(いへ)もはやく腐(くさ)るなり石灰(いしばひ)の
小池(こいけ)などは水湿(すいしつ)もれざるゆゑに
【左丁頭書】
近(ちか)くともさしたる害(がい)なし
○居間(ゐま)座敷(ざしき)は晴(はれ)やかにして
心(こゝろ)の伸(のぶ)るやうにすべし学問所(がくもんじよ)
茶室(ちやしつ)などは木を植(うゑ)てこもり
やうなるがよし広(ひろ)き間(ま)は折廻(をりまは)し
の板椽(いたえん)つきにして戸内(とうち)の障子(しやうし)
ある処は柱(はしら)なしにすべし雨戸(あまど)を
障子にそへて付(つく)るはわろし必(かならず)
椽(えん)のはしに付べし
○大和天井(やまとてんじやう)といふは篠竹(しのたけ)をよ
くあらひしげく並(なら)べかづらにて
編(あ)みつけ上に筵(むしろ)をしき其上
を土(つち)にてぬりたる也いにしへは
大和の国中(こくちう)皆(みな)かくのことくなり
しとぞ家(いへ)つよくしてほこり
なく鼠(ねずみ)のうれひなく虫(むし)おちず
たとひ屋根(やね)に火事(ひごと)ありとても
【右丁本文】
一 腹(はら)を切損(きりそん)じたる者 腸(はらわた)出て猶(なほ)生(いき)たるあり
これを救(すく)ふには冷水(ひやみず)を多(おほ)く面(かほ)へ吹(ふき)かくべし
おびえてぶる〳〵とする時 腸(はらわた)おのづから入るなり
もし時を過(すき)て風(かぜ)にあたりたるは乾(かわ)きて入 難(がた)き
もの也 是(これ)はあたゝめざれば入がたし医者(いしや)にまかす
べし又 喉(のど)を刺損(さしそん)じたるは其人を仰向(あふむき)にし
頭(かしら)に枕(まくら)を高(たか)くかひて瘡口(きずぐち)の開(ひら)かぬやうにし
風(かぜ)を防(ふせ)ぎ煖(あたゝ)かにして血(ち)を止(と)め医(い)をまつべし
一 金瘡(きりきず)にて身(み)冷(ひえ)ふるひ気絶(きぜつ)せんとするには
熱(あつ)き小便(せうべん)を吞(のま)しむべしあしげ馬(うま)の糞(ふん)をあつ
き湯(ゆ)にかきたてゝ與(あた)ふるもよし
一 諸(もろもろ)の瘡(きず)半夏(はんげ)をすり末(まつ)となしいたむ所へふり
かけてよし又 烏賊(いか)の甲(かう)の粉(こ)石灰(いしばひ)の粉なども
【左丁本文】
よろし又 麒麟血(きりんけつ)蒲黄(ふわう)竜骨(りうこつ)なども血(ち)を止
るによし青蒿(かはらよもぎ)紫蘇葉(しそのは)生(なま)にて付るもよし
一 鉄炮(てつはう)にうたれ丸(たま)肉中(にくちう)に止(とゞま)りたるは煖酒(あたゝめざけ)に蜂(はち)
蜜(みつ)を入れて多(おほ)く飲べし又 蓼穂(たでのほ)をすりて
末(まつ)とし苦参(くらゝ)黄柏(わうばく)【「キワダ」左ルビ】の粉をまぜぬり付てよし
○打撲(うちみ)落馬(らくば)の薬《割書:并》介抱(かいはう)の心得
【挿絵】