翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書
下なる器物(うつはもの)を取出しやすし
○家は二階作(にかいづくり)ならば高(たか)くたつ
べし低(ひく)きは鬱陶(うつとう)しくてよから
ずまた楼(にかい)は見はらしをむねと
して何方(いづかた)にても広(ひろ)く見とほ
すやうにすべし二かいの窓(まど)のふ
ちなどかまち高(たか)きはよからず
坐(ゐ)ながら眺望(ながめ)のあるやうに
すべきなり
○屋敷(やしき)の地面(ちめん)は水上(みなかみ)を高(たか)く
して水はけのよきやうにす
べし悪水(あくすゐ)所々にたまればおの
づから湿気(しつけ)の害(がい)ありて病(やまひ)の
もとゝなり且(かつ)柱(はしら)などもはやく
腐(くさ)るなり
○こけらぶきの屋根(やね)は大抵(たいてい)
十年にてはくさるものなり膠(にかは)に
【左丁頭書】
明礬(みやうばん)少し加(くは)へて絵(ゑ)のどうさの
ことくせんじやねの上にぬり
おけば水をはぢきて二十年は
くさらず
○茅屋(かやや)をふくに秋刈(あきがり)のかやの
長きをえらびてよく〳〵そろへ
なるほど厚(あつ)く念(ねん)をいれてふ
かすれば二三十年はこたゆる也
度々 心(こゝろ)をつけてつくろへば五
十年ばかりも持(もづ)ものなり
○茅屋(かやゝ)わら屋 改(あらた)めふかずして
久しくそこねざるふきやうは新(あらた)
にふきて四五年の後くさりて
ひきくなる所をわらにてもかや
にてもさきをまげてさすべし
ひきゝ所ばかりさしてはわろし
ひきゝ所の下より入てさすべし
【右丁本文】
一 打撲(うちみ)にて気絶(きぜつ)したるは其人を仰向(あふむけ)に臥(ふさ)せ
両耳(りやうみみ)の孔(あな)を力(ちから)にまかせてはたと打 其手(そのて)を
直(すぐ)に押付(おしつけ)てゆるめず眼(め)を開(ひら)くをまちて手(て)
を放(はな)つべし又其人の上に跨(またが)りて左右(さいう)の手
にて腹上(はらのうへを)しかと数遍(すへん)なでおろし掌(たなそこ)【「テノヒラ」左ルビ】を臍下(へそのした)に
あてウンと息(いき)をつめて一息(ひといき)に上(うへ)へつよくおし
上(あぐ)べし必(かならず)目(め)をひらくもの也其時引おこし項後(えりあと)
を強(つよ)く捺(もみ)て背骨(せぼね)をなでおろすべし或は声(こゑ)を
たてて呼(よび)いけ背(せな)をつよく打(うつ)もよし必 甦(よみがへ)る也
さて急(きふ)ならば小便(せうべん)を多(おほ)く飲(のま)しむべしされども
さやうにもしがたき人には温酒(かんざけ)に飴(あめ)をまぜて
のまするもよし瘀血(おけつ)小便(せうべん)に下るなり
一 打身(うちみ)肉ごもりになりたるは接骨木(たづ)【「二ハトコ」左ルビ】蒴藋(にはたづ)【「ソクヅ」左ルビ】
【左丁本文】
いづれにても水にせんじ二三 椀(わん)をのみ且(かつ)痛処(いたみしよ)
をたでゝよし又あし毛馬(げむま)の糞(ふん)を熱湯(あつゆ)にた
てゝあらふもよし又 蘩縷(はこべ)【「ヒイヅル」左ルビ】の茎葉(くきは)ともにもみ
て紺屋(こんや)のりにまぜぬるも妙也 水仙(すゐせん)の根(ね)もよろし
一 打撲(うちみ)痛(いたみ)つよく堪(たへ)がたきは鶏(にはとり)の血(ち)を酒にまぜ
てのむべしま又 童便(どうべん)もよろし
○口中(こうちう)ふくみ薬
一口中はれいたみできものある時は
藜(あかざ)《割書:秋の頃 実(み)と木(き)とひとつに|くろやきにしたる物一匁》桔梗(ききやう)《割書:五分》甘草(かんさう)《割書:同》
右三味粉にしてふくみてよし又方
滑石(くわつせき)甘草(かんさう)二味 末(まつ)にしてさゆにて用ゆ又方
辰砂(しんしや)《割書:中》滑石(くわつせき)《割書:大》甘草(かんさう)《割書:小》三味末して白湯(さゆ)にて用
ゆれば効(こう)あり口中すゞしくなる也