翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書】
かやうにしてしば〳〵つくろへば
数(す)十年もちこたゆる也おほく
腐(くさ)らぬうちにはやくつくろふが
よしわらかやの屋根(やね)は葺換(ふきかふ)れ
ば黒(くろ)きすゝ庭中(ていちう)にちらぼひて
見苦(みぐる)しく小半年(こはんとし)も過ざれば
もとのごとくならぬ物なればなり
たけ初(はじめ)に念(ねん)をいれおきて度々
ふきかへぬやうにするがよし
さて棟(むね)つまなどには竹(たけ)を編(あみ)て
きびしく覆(おほ)ひ風(かぜ)吹(ふ)くをりの
用心(ようじん)をすべし烏(からす)鳩(はと)などのとまらぬ
やうに竹(たけ)の枝(えだ)つきをあげおくも
よし棟(むね)の口(くち)には瓦(かはら)をおほひたる
がよし風にいたまずしてよく持(もち)
こたゆるなり
○柱(はしら)は大木(たいぼく)をひき割(わり)たる角柱(かくばしら)
【左丁頭書】
【挿絵】
を用(もち)ゆべし小木の丸柱(まるはしら)は甚だ
はやく腐(くさ)るもの也されども坐敷(ざしき)
などは丸柱(まるはしら)を風流(ふうりう)として用るが
今世(いまのよ)のさまなればそれに随(したが)ふも
宜しからんか勝手(かつて)まはり土蔵(どさう)
などはかならず角柱(かくはしら)にして幾(いく)
年もくさらずもつをよしとすべし
【右丁本文】
○気歯(きは)のいたみを治(ぢ)する薬
一 気(き)つかへにて歯牙(おくば)のいたむには五倍子(ふし)《割書:六分》ひ
はつ《割書:同》干山椒(ひさんしやう)《割書:同》三味常のごとくせんじふくみ
てよし又 五倍子(ふしのこ)一味きぬにつゝみ痛(いた)き歯(は)に
あてゝ嚼(かみ)しむるも妙なり又方
蒲黄(ほわう)香附子(かうぶし)塩(しほ)《割書:少シ加》つねのごとくせんじ
ふくみてよし又方
枯礬(こはん)蜂房(はちのす)おの〳〵等分せんじふくむ又方
石菖蒲(せきしやうぶ)の根(ね)をかみたゞらし虫歯(むしば)の孔(あな)へ入てよし
また牛蒡(ごばう)の実(み)を水煎(すいせん)しふくむ又
黒豆(くろまめ)を酒にてせんじふくみてよし石灰(いしばひ)砂(さ)
糖(たう)等分にして歯(は)の穴(あな)へ入るもよし
○喉痺(こうひ)の薬
【左丁本文】
一 俄(にはか)に喉(のど)ふさがるを喉痺(こうひ)といふ酒に塩少し
加(くは)へ口中にふくみ少しづゝ吞(のめ)ば破(やぶ)れずして
腫(はれ)次第(しだい)にへりてはやくいゆる也又方
赤蜻蛉(あかとんぼう)の黒焼(くろやき)を管(くだ)にて吹(ふき)こむべし奇妙(きめう)に
しるしあり又 鳳仙花(ほうせんくわ)の実(み)をのむもよし
○喉(のど)に食(しよく)つまりたるを治(ぢ)する方
一 飯(めし)を食(しよく)する時 喉(のど)につまり難義(なんぎ)する時は
塩(しほ)を少し箸(はし)につけなめてよろしまた
茶漬(ちやづけ)のつまるは湯水(ゆみづ)にては下(くだ)らぬものなり
酢(す)を飲(のみ)てよろし妙なり
○湿気(しつけ)の妙薬
一大なる蝦蟇(ひきがへる)【左ルビ「ガマ」】を土(つち)につゝみ黒焼(くろやき)にして七日
が間 朝夕(あさゆふ)酒にて用ゆべし大に奇効(きこう)あり
【枠外】
広益秘事大全 七十一