翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書】
乾(かわ)きて又 築(つ)くなり若(もし)急(きふ)なる
時は二三段づゝも築(つか)るゝ物なれど
さやうにしては湿気(しつけ)去(さり)がたくして
よわしさて築上(つきあげ)て湿(しめり)よく〳〵
かわくを見てやねを葺(ふく)べし
やねも五寸ばかりのあつきに土を
つけて其上に瓦(かはら)をふく也 屋根(やね)
下は厚板(あついた)を用ゆべしこれを内(うち)
外(そと)より上塗(うはぬり)をし戸窓(とまど)のすき
間(ま)なきやうにしておけばいかなる
大火(たいくわ)たりとも火の入る事 絶(たえ)て
なし大暑(たいしよ)と大寒(たいかん)の時には
つくべからず春(はる)は三月より梅雨(つゆ)
の前(まへ)秋(あき)は七月 末(すゑ)より十月末ま
でにつくべし
○諸(もろ〳〵)の材木(ざいもく)は切(きり)てそのまま皮(かは)を
むき久しく水(みづ)に漬(ひた)しおきて用
【左丁頭書】
ゆるをよしとす皆(みな)虫(むし)をさくるの
術(じゆつ)なり又六月 土用中(どようちう)に伐(きり)たる
木には虫(むし)入らず
○狭(せば)き家(いへ)にて椽(えん)近(ちか)く小便所(せうべんじよ)を
造(つく)らば瓶(かめ)をほりすゑ上戸(じやうご)の穴(あな)
より細(ほそ)き箱(はこ)か竹にてもとほし
瓶(かめ)の中へおろし其外をば瓶(かめ)に
蓋(ふた)をして臭気(しうき)のもれぬやう
に作(つく)り構(かま)ふべし上戸(じやうご)の口には
杉(すぎ)の葉(は)を入れたび〳〵取かへて
よろし坐敷(ざしき)ちかき厠(かはや)小便(せうべん)所
などは殊(こと)に心をこめて清浄(しやう〴〵)
にすべき事也 厠(かはや)にも蓋(ふた)をして
すき間(ま)をよくふさきおくべし
臭気(しうき)もれずしていさぎよし
○居間(ゐま)の内(うち)は風雅(ふうが)にして飾(かざり)なく
いさぎよきをむねとすべし飾(かざ)り
【右丁本文】
を吸(すひ)出して痛(いたみ)やむなり
○牛(うし)馬(うま)に噛(かま)れたる薬
一 牛馬(ぎうば)にかまれたるは急(きふ)に灰(はひ)を熱(あつ)き湯(ゆ)の中へ
いれ湯(ゆ)のさめぬやうにしてひたもの漬(ひた)すべし
若(もし)腫(はれ)あらば石を炙(あぶり)あつくして熨(の)すべしまた
白砂糖(しろざたう)鶏冠(にはとりのさか)の血(ち)なとぬるもよろし
【挿絵】
【左丁本文】
○鼠(ねずみ)に咬(かま)れたる薬
一 鼠(ねずみ)の中に一種(いつしゆ)の毒鼠(どくそ)あり若(もし)これに咬(かま)
るゝ時は傷(きず)は愈(いゆ)れども毒気(どくき)惣身(さうしん)にまはりて
後(のち)竟(つひ)に大熱(だいねつ)を発(はつ)し狂(くる)ひまはりて死に至る
ものまゝあり恐(おそ)るべしこれを療(りやう)ずるにはまづ
急(きふ)に鉄砲薬(てつはうぐすり)を傷(きず)の上におきて火(ひ)をつくれば
毒(どく)散(ち)るなり其後に麝香(じやかう)をぬりつけて白(しろ)
つゝじの花(はな)又は千屈菜(みそはぎ)をせんじて服(ふく)すべし
もし急(きふ)に焔硝類(えんしやうるい)なき時はよく血(ち)をしぼり出
し又は熱湯(ねつたう)にひたして後 牽牛(あさがほ)の葉(は)または
桐木(きりのき)の黒焼(くろやき)なべすみなどなどをつけてよし黏(とりもち)
におしまぜて付(つく)るをよしとすまた黄栢(わうばく)石灰(いしばひ)
蛎(かき)の粉(こ)三味 蘩縷(はこべ)【左ルビ「ヒイヅル」】の汁にてつくるもよし
【枠外】
広益秘事大全 七十四