翻刻
【枠外】
広益秘事大全
【右丁頭書】
の庇(ひさし)を長くして湯殿(ゆどの)雪隠(せついん)又
少しづゝの物置(ものおき)處にすべし
○居風呂(すゑふろ)の木はむろの木また
槙(まき)榧(かや)くさまきを用ゆべし香(かう)
気(き)ありて水につよし又 湯風呂(ゆぶろ)
はかた隅(すみ)へよせたるはくさりはやし
四方(しはう)ともに風のとほるをよし
とすべし
○生垣(いけがき)は杉(すぎ)の生(いけ)がきよろし
小冬青樹(かもみのき)の生垣(いけがき)亦(また)よしいづ
れも茂(しけ)くうゑてきびしく
ゆひ梢(こずゑ)を伐(きり)そろゆればさかえ
茂(しげ)りて枝葉(えだは)おほく壁(かべ)のごと
くになるものなり山梔子(くちなし)の
生(いけ)がき又よろし萩(はぎ)寒竹(かんちく)など
此余(このよ)も葉(は)のしげき物を植(うゝ)べし
外に池堀(いけほり)などある處 尤(もつとも)よし
【左丁頭書】
天気(てんき)の善悪(よしあし)を見様(みやう)
天気(てんき)のよしあしを見る法 昔(むかし)より
おほしといへどもおほかたは無用(むよう)
の事(こと)のみにして中(あた)ること少し
今(いま)こゝに挙(あぐ)るところはその験(しるし)
あるかぎりの事どもを和漢(わかん)の
書(ふみ)より引出(ひきいて)て考(かんが)へ記(しる)したるなれ
ば第一(だいゝち)船(ふね)にのり道(みち)を行(ゆ)く時の
こゝろ得あるひは農業(のうげう)漁猟(ぎよれう)など
の事に知(しり)おきて益(えき)を得(う)ること
多(おほ)かるべし
○雨(あめ)と晴(はれ)とを知(し)るには其(その)日(ひ)
暁(あかつき)の天気(てんき)と日(ひ)の出る時を伺(うかゞ)ふ
べし日の出る時 赤(あか)きは風(かぜ)黒(くろ)
きは雨 青(あを)く白(しろ)きは風雨(ふうう)と
しるべし又日のいづる時はれて
【右丁本文】
第一(だいゝち)毎日(まいにち)灸(きう)する時 風(かぜ)をさくべし風 瘡(きず)口より入れば
変(へん)しで【じてヵ】急症(きふしやう)となり死(し)に至(いた)る或は犬(いぬ)の如(ごと)く吼(ほえ)た
けりて狂(くる)ひ死(し)するあり慎(つゝし)むべし食物(しよくもつ)は
犬肉(いぬのみ)《割書:一生喰ふ|べからず》 赤小豆(あづき) 蕎麦(そば)《割書:三年の間|食ふべからず》 酒(さけ)《割書:一年のむ|べからず》
胡麻(ごま) 麻子(をのみ) 索麺(そうめん) 芋(いも) 油揚(あふらあげ)の類(るい)一切(いつさい)醋(す)のもの
魚類(うをるい) 梅(むめ)《割書:百日の間この品々|くらふべからず》 右の物(もの)食(くら)へば忽(たちまち)死(し)すべし
【挿絵】
【左丁本文】
ゆめ〳〵慎(つゝし)みて妄(みだり)にすべからず若(もし)再発(さいほつ)する時は
いかなる名医(めいい)たりとも救(すく)ふべきやうなき物也
○瘤(こぶ)ぬき薬
一 白蛇(はくじや)《割書:一両 黒焼(くろやき)|にして》 一 檜木(ひのき)の皮《割書:一両》
右(みぎ)二色(ふたいろ)合(あは)せ天南星(てんなんしやう)を粉(こ)にし少(すこし)づゝ加(くは)へて漆(うるし)にて
付(つく)べし
○鼻血(はなち)を止(とむ)る法
一 鼻血(はなち)多(おほ)く出るとも椶梠箒(しゆろはうき)のさきを切(きり)出る方
の鼻穴(はなのあな)へさし込(こむ)べし左右(さいう)共に出るならば左右へ
さし込べし頓(とみ)に止(とま)る事 神(しん)のごとし
○腫物(しゆもつ)の出来所(できどころ)あしきは他所(たしよ)へのくる法
一 萆麻子(ひまし)の油(あぶら) 一 甘草(かんざう)の粉(こ)
右二 味(み)ねり合せ腫物(しゆもつ)には押薬(おしぐすり)を付(つけ)よせんと思ふ
【枠外】
広益秘事大全 七十六