翻刻
【枠外】広益秘事大全
【右丁頭書】
○檳榔子染(びんらうじぞめ)はどろ染(ぞめ)に粗(ほゞ)同
じくしてどろ染よりはつよく
久しくやぶれず其方
檳榔子(びんらうじ)《割書:六匁》石榴皮(ざくろがは)《割書:六匁五分》
五倍子(ふし)《割書:十八匁》
下地(したぢ)を藍(あゐ)にて空色(そらいろ)にそめ右の
三 種(しゆ)をきざみ水七升五合ほど
入れ五六升ばかりにせんじ四五
へんそめて染あげを砥水(とみづ)に一
夜ひたし明朝(あけのあさ)取(とり)あげよく〳〵
すゝきてほす也
○黒茶染(くろちやぞめ)は下地(したぢ)を藍(あゐ)にて
こくそめ其上をあたらしき山
もゝの皮をせんじて六七へんそめ
その上に泥(どろ)を水にてとき右の
染物(そめもの)を小半時ほど浸(ひた)しおき取
あげほして又 泥水(どろみづ)にひたすべし
【左丁頭書】
【挿絵】
二へんひたせば色(いろ)濃(こ)くなるなり
泥(どろ)につけ巻(まき)てそむべし或は楊梅(やまもゝもの)
皮(かは)を用ひずなしの木のかうを
用ゆるはまされり寒(さむ)き時は泥(どろ)を
熱湯(あつゆ)にてときてそむべし
世(よ)に大師染(だいしぞめ)などいひて地を
ほりて其 泥水(どろみづ)にて布(ぬの)を染るに
【右丁本文】
その証拠(しやうこ)は犬(いぬ)猫(ねこ)鶏(にはとり)鼠(ねずみ)の類(るい)つひに難産(なんさん)して
死(しに)たる事なきは無智(むち)なる故に死(し)を畏(おそ)れず唯(ただ)
天然(てんねん)にまかせて気遣(きづか)ひせぬが故(ゆゑ)なりさればと
て見持(みもち)も心持(こゝろもち)も放埓(はうらつ)にして禁忌(きんき)の食物(しよくもつ)をも
いとはず分(ぶん)に過(すぎ)たる力業(ちからわざ)をし手のとゞかぬ物
を及(およ)びごしに強(しひ)てとるなどは態(わざ)と難産(なんざん)を
もとむるが如き物なれば尤(もつとも)慎(つゝし)むべし中にも
懐妊(くわいにん)の後(のち)は夫婦(ふうふ)交合(まじはり)をもかたく戒(いまし)むべし
五月(いつつき)を越(こえ)ては殊更(ことさら)に慎(つゝし)むべしこれに背(そむ)きて
難産(なんさん)となる事 世間(せけん)十にして七八なるべし
そのうへに懐妊(くわいにん)をば病(やまひ)のごとく心得て養生(やうじやう)と
号(がう)して身(み)をつかはず安逸(あんいつ)にして居(を)るゆゑに
食物(しよくもつ)こなれず且(かつ)何ともなきに薬(くすり)をもとめて
【左丁本文】
飲(のみ)などするより胎(たい)をさまたげて却(かへつ)て病(やまひ)を
おこす事あり薬(くすり)は加病(かびやう)なければ決(けつ)してのむ
べからず如此(かくのごとく)してあらば世(よ)に難産(なんざん)といふ事は
あるまじき理(り)を能々(よく〳〵)考(かんが)へおくべきなり
○産(さん)をする時の心得(こゝろえ)
一 産(さん)すべき時に臨(のぞ)みて腹(はら)つよくいたむとも
少しも驚(おどろ)くべからず又 立騒(たちさわ)ぎて驚(おどろ)かすばか
らず只(たゞ)生(うま)るべき時に生(うま)るべしと心を安(やす)らかに
もちてあるべきなり時(とき)に至(いた)らざる内はいか程
急(いそ)ぎても生(うま)るゝ物にあらず時(とき)至(いた)らざる内に
しひていきむ故に横子(よこご)逆子(さかご)などの難産(なんざん)と
なる事 多(おほ)し慎(つゝし)むべし生るべき時 来(きた)れば内
よりおのづからいきみを催(もよほ)すもの也その時(とき)みづ