翻刻
腐敗(ふはい)皆(みな)右(みぎ)の性(せい)あるを根拠(こんきよ)としてこれが考(こう)
按(あん)を為(な)し出(いだ)せるなり
大気(たいき)の酸素(さんそ)侵入(しんにふ)して一(ひと)たび腐敗(ふはい)の作用(はたらき)を
起(をこ)せば則(すなわち)其後(そのご)は陸続(りくぞく)として酸素(さんそ)の入(い)り来(きた)
ることなしと雖(いへとも)尚(なを)能(よ)く漸(やうや)くに腐敗(ふはい)に進(すヽ)み
行(ゆ)きて止(とヾ)まることなし然(しか)れども酸素(さんそ)の侵(しん)
入(にう)透徹(とうてつ)するに自由(じゆう)なると多少(たせう)其(その)浸透(しんとう)を阻(そ)
障(しやう)する者(もの)あるとの量(りやう)に従(したか)ひ其(その)進(すヽ)み行(ゆ)く所(ところ)
の形状(けいぢやう)亦(また)種々(しゆ〴〵)なり腐敗(ふはい)を起(おこ)すの後(のち)酸素(さんそ)侵(しん)
入(にふ)の路(みち)を絶(たち)ては其(その)腐敗(ふはい)に趣(おもむ)く経過(けいくわ)の諸態(しよたい)
極(きわ)めて遅緩(ちくわん)なりこれ則(すなはち)アツペルト氏(し)の法(ほふ)
を以(もつて)肉(にく)を鑞(らふ)付せる鉄葉筒内(てつやふたうない)に貯(たくは)へてこれ
が腐敗(ふはい)を防(ふせ)くに於(おい)て見(み)るが如(こと)し猶(なを)下条(かでう)に
備(つぶ)さに論述(ろんじゆつ)するを以(もつて)自(おのづか)ら明(あきら)かなるべし右(みぎ)
の筒内(とうない)に将(まさ)に貯(たくはへ)んとする所(ところ)の肉(にく)を盛(も)り次(つぎ)
に其(その)間隙(かんげき)を充(み)つるに肉(にく)を煎熬(せんがう)して採(と)る所(ところ)
の稠厚(てうこう)なる液汁(えきじふ)を以(もつて)し十分(じふぶん)に筒(とう)に満(み)つる
の後(のち)鑞(らう)を鎔(とか)して以(もつて)これを固封(こほう)し厳(げん)に外気(ぐわいき)