翻刻
費(ついや)すと雖(いへども)又(また)粉末(ふんまつ)になせる黍菜(てんさい)は少許(せうきよ)の水(みづ)に
溶(と)かして糖分(たうぶん)の浸出(しんしゆつ)すること十分(じふぶん)なる故(ゆへ)
極(きは)めて純粋(しゆんすい)稠厚(てうこう)なる糖汁(たうじふ)を直(たヾち)に出(いた)すを以(もつて)
煎熬(せんがう)の焚材(はんさい)を省(はぶ)くこと多(をほ)しこれに由(より)て當(たう)
初(しよ)の焚材(はんさい)の費(ついへ)は大概(たいかい)償(つくな)ひ遂(つい)に平均(へいきん)するに
至(いた)るべし
野菜(やさい)を乾(かわか)し貯(たくは)ふるは古法(こはう)なり然(しか)れとも近(きん)
来(らい)仏蘭西人(ふらんすじん)マッソン氏の創意(さうい)に出(い)で大(おほひ)に古(こ)
法(はふ)を改正(かいせい)せり野菜(やさい)の葉(は)を乾(かわ)かして強(つよ)くこ
れを圧榨(あつさ)し四方(しはう)五寸(こすん)厚(あい)さ半寸(はんすん)の方餅(はうべい)と為(な)
すなりこれに由(より)て外気(くわいき)に暴露(ぼくろ)するの面(めん)を
減(げん)ずると以(もつて)気(き)の侵入(しんにふ)してこれを腐敗(ふはい)せし
むるの力(ちから)を減却(げんきやく)す此(この)法(はふ)を以(もつて)通常(つうじやう)の白菜(はくさい)ブ
リュツセル《割書:和蘭(わらん)ブラバン|ドの一都会(いつとくわい)》より出(いだ)す非時(ひじ)の菜(さい)
〈寒中(かんちう)の胡瓜(こくわ)の類(るい)〉草黄連(さうわうれん)菠薐菜(はうれんさう)及(およ)びユリー
ネの羹(かう)等(とう)其(その)成分(せいふん)を榨(さ)して鉄葉筒内(てつゑふとうない)に盛(も)り
鑞(らふ)を鎔(とか)してこれを固封(こほう)しこれを販売(はんばい)す乃(すなは)
これを食(しよく)に供(きよう)せんとする時(とき)に方(あたり)て半時(はんじ)乃(ない)