翻刻
なる糖水(たうすい)は能(よ)く防腐(ばうふ)の力(ちから)を有(たも)てり是(こ)れ唯(たヾ)
其(その)本体(ほんてい)の腐敗(ふはい)せざるのみにあらず其内(そのうち)に
浸㴠(しんかん)せる物品(ぶつひん)に至(いた)るまで共(とも)に久(ひさ)しきに堪(た)
へしめこれをして腐敗(ふはい)せしめず菓実(くわじつ)菜根(さいこん)
等(とう)一切(いつさい)植物(しよくぶつ)の品類(ひんるい)を沙糖(さたう)に蔵(つけ)てこれを貯(たくは)
へ能(よく)し久(ひさ)しきに堪(た)ゆることは衆(しう)の已(すで)に明(あきらか)に
知(しり)て人々(ひと〳〵)常(つね)に用(もち)ゆる所(ところ)なり
乳汁(にうじふ)を貯(たくは)へて敗(やぶ)れざらしむるに其(その)重量(ちようりやう)三(さん)
分(ぶん)一(いつ)の沙糖(さたう)を溶和(ようくわ)し煮(に)て舎利別(しやりべつ)の調(てう)に至(いた)
るべし又(また)ハデオイル氏(し)の法(はふ)に従(した)ひ煎熬(せんがう)し
て乾固(かんこ)するに至(いた)り硬餅(かうべい)の状(ぢやう)を為(な)してこれ
を貯(たくは)ふるは宜(よろ)しき所(ところ)にあらずこれ則(すなはち)これ
を用(もち)ゆるとき再(ふたヽ)びこれを水(みづ)に溶(と)かすと雖(いへども)
植物乳(しよくぶつにう)を溶(とか)す如(ごと)く十分(しうぶん)親密(しんみつ)なる融化(ゆうくわ)解釈(かいしやく)
を得(ゑ)ざればなり
第三 寒冷法(かんれいはふ) 炎熱(えんねつ)の候(こう)に方(あたり)て肉類(にくるい)及(およ)び他(た)の
食品(しよくひん)を貯蔵(ちよざう)せんと欲(ほつ)すればこれを氷室(ひようしつ)の
内(うち)に貯(たくは)ふべし故(ゆへ)に英国(えいこく)に於(おい)て常用(じやうよう)とする