翻刻
卵白(らんはく)を敗(やぶ)り遂(つい)に最内(さたい)の部(ぶ)に及(およ)ぼすなり専(もつは)
ら賞(しやう)する所(ところ)の法(はふ)は石灰乳(せきくわいにふ)を用(もち)ゆるの法(はふ)な
りこれ即(すなはち)卵(らん)の尖部(せんぶ)を下(しも)として一(いつ)の石壺(せきこ)の
内(うち)に積(つみ)て石灰乳(せきくわいにう)を充(み)つるなり此(かく)の如(ごと)くす
れは石灰(せきはい)漸徐(ぜんじよ)に卵殻(らんこく)を通徹(つうてつ)して終(つい)に其(その)卵(らん)
白(はく)と把合(はうがふ)し硬(かた)くして大瓶状(たいへいぢやう)の皮(かわ)を生(しやう)ずこ
れに由(より)て石灰水(せきくはいすい)を貫(つらぬい)て侵入(しんにふ)する所(ところ)の酸素(さんそ)
を拒絶(きよぜつ)し殻内(こくない)を侵(をか)さしめずこれに由(より)て久(ひさ)
しく貯(たくは)へて時(とき)に及(およ)んでこれを食料(しよくれう)に供(きよう)し
て可(か)なり唯(たヾ)専(もつは)ら卵(らん)のみを食(くら)ふ時(とき)は生下(せいか)新(しん)
鮮(せん)の者(もの)の如(ごと)くならず
又(また)一方(いつはう)あり生下(せいか)新鮮(しんせん)の卵(たまご)を暫時間(ざんじかん)大抵(たいてい)二(に)
分時(ぶんじ)計(ばか)り沸湯(ふつたう)の内(うち)に浸(ひた)し火力(くわりよく)の内部(ないふ)まで
徹(てつ)せず卵白(らんはく)の分(ぶん)外面(くわいめん)のみ少(すこ)しく凝固(ぎようこ)する
のみにして以(もつて)其(その)内部(ないぶ)流動(りうとう)せる中央(ちうわう)の為(ため)に
一(いつ)の衣(ころも)を為(な)さしむるなり其後(そののち)卵(らん)を鋸屑内(きよせつない)
に置(お)き冷処(れいしよ)に貯(たくは)ふ尚(なを)これを的実(てきじつ)ならしめ
んことを慮(をもんはか)れば右(みぎ)の外面(くわいめん)のみ煮(に)たる卵(らん)を