翻刻
り即(すなはち)動植(どうしよく)諸品(しよひん)をして長(なか)く其(その)真形(しんけい)を存(そん)せし
むるに妙(めう)なり又(また)これを屍(かばね)に塗(ぬ)りて長(なが)く存(そん)
せしむるに用(もち)ゆ唯(たヾ)単(たん)に塩酸汞(えんさんこう)の溶水(ようすい)を唧(そく)
筒(とう)を以(もつて)脉管中(みやくくわんちう)に注(そヽ)ぐか或(あるひ)は全身中(ぜんしんちう)其(その)貯(たくはへ)ん
と欲(ほつ)するの部(ぶ)をこの溶水(ようすい)の内(うち)に浸(ひた)せば永(えい)
久(きう)腐敗(ふはい)することなし木醋(ぼくさく)の内(うち)に浸(ひた)すも其(その)
防腐(ばうふ)の力(ちから)はこれに異(こと)なることなしプリニ
ウス氏(し)の説(せつ)に上古(しやうこ)ギリシヤ人(じん)の其(その)屍(かばね)に脂(あぶら)
してこれをして永(なが)く腐敗(ふはい)せしめざるは木(ぼく)
醋(さく)の力(ちから)なること毫(かう)も疑(うたがひ)を容(い)れずとこれを
為(な)すには先(まづ)屍(かはね)を炭酸(たんさん)ナトロンの灰汁中(はいじふちう)に
浸(ひた)すこと猶(なを)阨日(えじつ)多国(たこく)のナトロン湖(こ)に於(おい)て
するか如(ごと)し其後(そののち)セデリウムと名(なつ)くる《割書:是(こ)れ|即(すなは)ち》
《割書:焚(たい)て木油(ぼくいう)を餾(りう)する時(とき)初(はじ)めて流出(りうしゆつ)する酸味(さんみ)|の水液(すいいき)にして所謂(いわゆる)木油(ぼくいう)胆汁(たんじふ)なる者(もの)なり》
液(えき)を唧筒(そくとう)を以(もつ)て注入(ちうにふ)するなり身体(しんたい)の諸腔(しよこう)
内(ない)には香竄(かうざん)なる樹脂等(じゆしとう)及(およ)び他(た)の香料(かうれう)を填(てん)
充(じう)するなりこれ其(その)屍(かばね)をして長(なが)く敗(やぶ)れしめ
ざるの術(じゆつ)なり