翻刻
【右丁】
《割書:重次かもとに使者をたてゝきのふの見参を礼謝す又重次の御芳》
《割書:志によつて父か最後に帯せし物具ふたゝひ見て侍る事返す〳〵》
《割書:も悦ひ候ひぬ忠政か家につたへし父か形見に見るへき物猶すくな》
《割書:からす見くるしくは候とも此物の具重次の御家にとゝめて御名》
《割書:誉と共に御子孫につたへられん事弓矢とつての道に候よき御遺》
《割書:誡にもや候へきとて甲冑太刀刀こと〳〵く返しぬそれよりのち》
《割書:毎年の冬綿あつくいれたる衣四五領使者にもたせてはる〳〵と常陸》
《割書:国に送りつかはし音信を通する事忠政か一期のほと終におこたらず》
《割書:水戸殿此事を聞し召大にかんじ給ひ年〳〵【ゝ】の忠政か使者の来るべき》
《割書:期に至ては必道はしをも修理させ重次にも客儲へき魚鳥やうの》
《割書:ものたまひけるいつれも〳〵とり〳〵にやんごとなき事に候ひしよし》
《割書:鳥居の家ふるき侍の申せしを承りぬ又世につたふる所石田三成かとら》
《割書:はれし時忠政かためには父の敵也とて忠政に預下さる三成いたわる事》
《割書:ありしに忠政よきにいたはり小袖したゝめさせ薬料等おこたらす三日》
《割書:を過て後三成を預下さるゝ事領掌すてに畢ぬ抑父にて候元忠》
《割書:君の御ために一命を奉りし上は三成かあなかちに忠政か父の敵とも》
《割書:申へからす同くは返し奉へしと申けれは年わかきものゝ心つきの程神》
《割書:妙也と御感ありしか此後忠政頻に御恩くはへられ大名となされしと》
《割書:いふ此説は誤あり三成を預給ひしは元忠か二男土佐守成次かその頃は》
《割書:久五郎と申せしか預られしをかくは申けると也此時忠政は宇津宮にとゝ》
【左丁】
《割書:められ上方へ|はまいらす》其嫡子左京亮忠恒二男戸沢越中守某《割書:戸沢|右京亮》
《割書:政盛伯母聟にて子|なけれは養子せし也》三男主膳正忠春左京亮忠恒父につく身
多病にして其家つくへき子とてもなく寛永十三年に卒
けれは家絶ぬ《割書:忠恒子なく舎弟忠春猶いとけなけれは戸沢か養子となせし|越中守を召返して家ゆつらんといひし故に家絶し共いふ》
《割書:又鳥居の家のふるき侍の申せしは忠恒子なかりしかは弟の忠春をして》
《割書:家つかせんとおもふ忠春母は父か妾也けれは忠恒我母すてにうせたまひぬ》
《割書:忠春か母は我ためにも母也とてつねにつかふる事実の母のことし然るに》
《割書:此母かまひましき人にて忠恒上に申て忠春をよつきにさたむること》
《割書:遅し〳〵と待わひ天徳寺にはしり入住持の僧たのみて此よし将軍家に》
《割書:うつたへんとす忠恒大に驚きみつからかの寺におもむき色々にいひなくさめて》
《割書:ゐて帰るさすか面にあらはれてうらむる色はなけれ共心のうちにはなさけなき》
《割書:事にや思ひけん此後は我よつきさだめんともわず【?】家の老とも此事をすゝ》
《割書:む我ら子なし忠春よつきたらん事勿論也若我父祖の忠を思しめさは》
《割書:たとへ此よしを望申さすとも我家たゝせ給ふ事あるへからす忠恒か身》
《割書:の病ありて出てつかふるたにならすいかにはゝかりなく我後の事まて望》
《割書:申すべきといひけり終には病いゆる事なくて卒す将軍家鳥居か累》