翻刻
【右丁】
合戦に御方いまた陳【陣】の行ひをなさゝるに武田の物見の者
と見えて武者三騎引かけ〳〵出来り馬の鼻をならべ
てこなたにむかつて打たつ家長叔父甚五左衛門善教
と二人御方の陣よりすゝみ出各中ざし一筋ツヽぬき
出しよつ引て放つ矢頃少し遠けれはあたる迄こそ
なけれとも弓勢のほとにや恐れけん引返してそ逃ちり
たり此年六月二日二俣の城を攻る城の兵うつて出
両陣に川をへだてゝさゝへたり敵のかたより朝比奈
弥兵衛尉と名のりて出松平彦九郎か首取て引かへす
家長彦九郎之外戚につきてしたしけれは当の敵
【左丁】
のかさしとおつかゝつてはなつ矢朝比奈か鎧の後より
前へたつて射ぬきしかはなとかはすこしもたまるへき
うつふして死す弟の弥蔵これを見て兄か首とらせしと
おしへたゝりてきつてかゝる家長又取てつかいしはしかため
てはなつ矢にまつたゝ中をとほされて是も同くたふれ死
し敵朝比奈兄弟うたるゝを見て水をさつと渡して
家長をめかけ切ツてかゝる御方内藤うたすなつゝけとて
をめきさけんて馳寄■敵かなはしとや思ひけん氏屋に
に火をかけ烟にまきれて引て行明れは三日城の大将
依田右衛門佐信蕃石川日向守家成か陣に使者を