翻刻
【家紋風挿絵あり】
本家 御目じるし大極上々吉の
神仙路考油(しんせんろこうゆ) 一枚看版(いちまいかんばん)出し置(おき)申候
瀬川 十包(とつゝみ)入 一箱(ひとはこ)に付 給金(きうきん)千両
一第一かほのいろを白くし
こうせきをさわやかにす
一あいきやうをつけ身
ほねをやはらかにし
身のきくこと至(いたつ)て
妙(めう)なり所作(しよさ)おどり
などならふ人つねに
ふり付(つけ)てはなはだ
しるしあり
右(みぎ)路考油(ろこうゆ)の儀(ぎ)は王子(わうじ)
の社(やしろ)御むさう【無双】の妙薬(めうやく)
にしてつねに用ゆる
人は年よらずして
【左頁上段】
かんしよく【顔色】おとろへず
ゆゑに神仙(しんせん)の名(な)あり
先(まづ)第一 鷺(さぎ)むすめの
ゆきの夜(よ)も
寒気(かんき)をうけ
ず女なる神(かみ)【女鳴神】の
雨(あめ)の日もしつけ【湿気】を
うけずむけん道成寺(どうしやうじ)
汁(る)にあたる時(とき)はわる口(くち)の
どくをけしてむねの
ひらく事 石橋(しやつきやう)の
ぼたん【注】のごとしねむり
をさましたいくつを
しりぞくる其功(そのこう)その
妙(めう)うしろ面々(めん〳〵)
用ひて後(のち)
しるべし
【注 石橋の牡丹=能楽の曲名。僧寂昭が唐土巡礼中、清涼山で石橋を渡ろうとした時、文殊菩薩に仕える獅子が現れ、咲き乱れる牡丹の花に戯れていたという故事が謡曲化されたもの】
【挿絵内・右ページ】
○たのまれた
扇面(せんめん)も
けふはかゝずは
なるまい
かずが
おほいから
印(いん)をおす
ばかりも
大ことだよ
【挿絵内・左ページ】
○にしのさじきにゐる
けんぶつはどうかみた
やうなかほだがどうも
おもひだされん
わいの
○太夫どんの
おいでなさる
しばゐはよこ
ほりのちやふねときていつでも
あたらねへといふことはござりやせん
【背景の貼り札「瀬川菊之丞」は歌舞伎の女形の名跡。代々「路考」の俳名を用いた。】